プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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ウクライナは降伏して人命を救うべきか? 中国は日本に降伏すべきだったか?

 今回のウクライナ戦争で、日本において「ウクライナは早く降伏・譲歩して国民の命を救うべきだ」と述べる論者が主に2人いる。

 元大阪府知事で弁護士の橋下徹 氏、

 テレビ朝日コメンテーターの玉川徹 氏

 である。

 もちろん、これも一つの考え方だ。

 第二次大戦で日本はとっくに勝ち目はなかったが、しかしさっさと降伏しなかったので、東京大空襲や広島と長崎への原爆投下という惨事を招いた。

 もし早く降伏していれば何十万人もの人命が救われ、その後の日本の復興に大いに貢献しただろう。

 いや、そんなことより、何よりも人命が大事なのは自明であり、国民が生きていればこその国家ではないか……
 
 そういう歴史認識も、確かにあり得る。


 だが、思わずにいられないのである――

 それなら昔の――まだ百年も経ってない昔の――中国も、さっさと日本に降伏して人命を救うべきだったろうか。

 ナチスドイツに攻め込まれたソ連も、初戦で負けたのだからすぐ降伏するのが人の道だったろうか。

 要するに、自国より強い強大国に攻め込まれた国は、無駄な抵抗は止めて速やかに降伏するのが人道に叶う、ということだろうか。

 これはまさに侵略者の弁護……

 と言うより、侵略者自身が言いそうであり、言ってもきたことではないか?

 中国もソ連も、日本とドイツに抗戦したばっかりに何百万人(何千万人?)もの犠牲者を出した。

 それは、間違いだったのだろうか。

 何よりも人命が大事だから、生きていれば国を取り戻す可能性があるから、今は降伏して生きながらえるのが得策であり人の道なのだろうか。
 
 中国とソ連の兵士や人民は、さっさと降伏しない指導者のせいで道を誤られ、膨大な犠牲を出した――

 そういうことにならざるを得ないはずである、この理屈では。

 そしてまた、攻め込んできた強大国に武力で抵抗するのは、全て間違いだということになるはずである、この理屈では。

 いや、昔の日本やナチスドイツに抗戦するのは正しかったのだ、今の時代のウクライナがそうするのは間違いなのだ、とは、どういう理由でそうなるのだろうか。

 
 たぶんこの理屈では、ロシアが日本に攻め込んできたら北海道(あるいは東北地方まで)の割譲が「落としどころ」になるはずである。

 中国が日本に攻め込んできたら、尖閣諸島はむろんのこと沖縄や九州もまた「落としどころ」の対象になるはずである。

 いや、それが日本全土の割譲であったとしても、国民の命が救えるのならそれが妥当な妥協だということになるだろう。

 これが日本人の共通認識であり、覚悟でもあるとしたら――

 もし私が外国の指導者なら、ぜひ日本を侵略したいと思うのである(笑)