4月5日、「ムツゴロウ」こと畑正憲 氏が死去した。享年87歳。
動物愛護家として日本で知らぬ者もないほど有名ながら、伝え聞く話によれば、実にアナーキーでハチャメチャ波乱万丈の人生・生活を送ってきたことを考えると、驚くべきほどの長寿に感じる。
これは、天寿を全うしたと言ってもいいのではないかと思う。
(⇒ 2021年11月11日記事:ムツゴロウ86歳いまだ健在-堂々たるタバコ愛とギャンブル愛)
私はなんだかムツゴロウのエピソードを聞くたびに、「これは動物界よりプロレス界にいた方が良かったんじゃないか」と思ってしまう。
むろんプロレス界と言っても今のプロレス界ではなく、昭和のプロレス界のことである。
現代のプロレス界では、とてもこれほどアクの強い豪傑的な人間は存在する余地がない気がする。
今はもう悪の代名詞としてしか使われないような「昭和」という時代には、そのような人間が大指弾も白眼視もされず、それどころか大活躍する余地があった。
ムツゴロウもその一人だと思うが、時代の変化を象徴するかのように、令和の彼は北海道の山奥にひっそり隠棲生活を送っていた。
しかしそのようなアナーキーな豪傑的な人間が、よりにもよって動物愛護なんて領域で頂点に上り詰めたという特異性は、やはり昭和ならではということだろうか。
今後、仮に動物愛護でこれほど名を挙げる人間がいたとしても、それは確実にムツゴロウタイプの人間ではないと思う。
それはもっと清潔でクリーンな、悪く言えば漂白されたアイドル人間みたいな人だと思うのだ。
動物との関わりについて日本人に与えた影響もさることながら、この点でもムツゴロウは、不世出の動物愛護家だった。
昭和的なというか、人間の面白さを体現した人物だったと思うのである――