4月3日、大阪高検は、とある強盗殺人未遂事件の無罪判決について、最高裁への上告を断念したと明らかにした。
その事件とは、2019年6月の「吹田市交番襲撃・拳銃奪取事件」――
交番の警察官を包丁で襲って拳銃を奪ったというものであり、それをやったのは現在36歳の男である。
そして彼は当時、統合失調症の治療中であった。
(⇒ 毎日新聞 2023年4月3日記事:大阪・吹田の交番襲撃、男性の無罪確定へ 高検が上告断念)
こうしてまた1件、「狂人無罪」の実例が加わったわけだ。
さて、日本国民はこういうニュースを聞くたびにウンザリし、いいかげん何とかならないのかと思っているはずである。
いや、もしかしたら、もう「飽きて」いるのかもしれない。
それほどこういうニュースは、よくあることなのだ。
そして私が毎度のことながら不思議なのは、「精神疾患があったら無罪」としている刑法を改正することを、どこの政党も言い出さないということである。
無罪は仕方ないとしても、「終身入院処分」にするということを、誰も提案しないということである。
(⇒ 2022年12月28日記事:飯能市一家惨殺事件-変な奴リスクと「狂人無罪」「狂人防犯」)
考えてみれば旧NHK党は、NHK受信料というたった1イシューにより国会に議席を獲得し国政政党となった。
しかしこの「精神疾患があったら無罪」刑法に対する国民の関心と反発は、NHK受信料の比ではないはずではないか?
この他にも「少年だったら罪にならない」少年法の改正・廃止や、
あれほど世間からもバッシングされる「不倫(姦通)」を刑法上の犯罪として復活させることについても、
なぜかあらゆる政党が言い出すことがないのである。
まるでそれは、政党が刑法改正をマニフェストに掲げるのは絶対のタブーであるかのようだ。
しかし私は思うのだが、これこそが――社会保険料などの国民負担を引き下げることを除けば――国民に最も訴えるところがある政党の「政策」だと思う。
それを誰も言わないなら、今から政党を作ろうと思っている人は、ぜひこれをマニフェストに掲げればよいのではないか。
たとえば、いわゆる「振り込め詐欺」に加担した者は懲役何十年の重罰に処する、なんてことを訴えれば、非常に多くの共感と得票が見込めると思うのである。
逆に言うと、もしそうでないとすれば、日本国民は「狂人無罪」に憤りつつも、実はそんなにたいした興味はないのだと結論することができるだろう。
しかしこの「刑法改正」という論題、諸政党にとっては手つかずの沃野でありフロンティアだと思うのである。
しかもこれ、経済政策ほど難しい政策立案能力は要さないように思える。
こんな「いいことづくめ」のマニフェストに誰も手を出そうとしないのは、本当になぜなのだろうか……