文春オンラインで、あのムツゴロウこと畑正憲 氏(86歳)の近況インタビューが掲載されている。
ムツゴロウと言えば、アントニオ猪木や長嶋茂雄らと同じく、昭和のスーパースターの一人である。(個人的には)
思い返せば64年も続いただけあって、そして全国民が「唯一の映像放送メディア」だった全国地上波テレビを見ていた時代だけあって、昭和という時代は真の国民的スーパースターが夥しく発生した時代だった。
(そして、最後の時代だったのもしれない。)
動物と言えば、ムツゴロウである。
ムツゴロウと言えば、動物と一緒にいるあのおじさんである。
複数の動物と一緒にいて嬉しそうにしている人を見れば、「ムツゴロウか」「ムツゴロウだ」と思う――
令和になった今でさえ、非常に多くの人がそういう連想をしていると思う。
なるほど一部には動物愛護の観点から、ムツゴロウの動物愛のあり方を疑問視・問題視する向きもあるようだが……
どうも今回のインタビューなんかを読んでいると、
「動物愛護ウンヌンなんてしゃらくさい、なまっちょろいことを言うな」
というような声が聞こえかねない気分がする。
今は北海道の100万坪?の大自然の中、大きなログキャビンハウスで老妻と犬1匹・猫1匹とで暮らす、ムツゴロウ……
わびしいと言えばわびしいが、しかしその意気はいまだ軒昂であるのが素晴らしい。
いまだにヘビースモーカーらしくタバコをスパスパ吸い、
競馬の醍醐味やギャンブルへの熱意を滔々と語る。
特に
「あまり将来のお金の心配はしない方ですね。僕はきれいな湿原や森を見ると、つい買ってしまうんです」
「ギャンブルは大好きですね。僕は、どうなるかわからない命懸けの瞬間が好きなんですよ」
「僕が阿佐田(哲也)さんに負けたという記録はどこかに残っていますか? ないでしょう。
このムツゴロウが徹マンで誰かに負けたという記録を持っている人がいたら見せてもらいたいものですね(笑)。
動物の原理に比べれば、麻雀の原理なんて大したことありません」
というくだりは最高である。
まさに老豪傑そのもので――
タバコが害だとかしゃらくさい、
ギャンブルにハマるのはよくないなんて黙ってろ、
などという口吻が聞こえんばかりではないか。
(もっともプロレスファンなら、あのターザン山本に似てるんじゃないかと思わないわけにはいかないが……)
私はギャンブルは全くやらないが、こういうギャンブルの面白さや奥深さ、魅力というものを否定しようとは思わないし、それにハマる人が全部が全部バカだとは思わない。
その恐るべきバイタリティがギャンブルの方面にも発露する、という人は、それはもういるに決まっているのである。
「ムツゴロウの動物王国」は消滅したが、ムツゴロウの存在と魂はいまだ健在――
それが確認できただけでも、今回のインタビューは出色であった。