ある年齢層の日本人男性の多くには、「わが心のUFO事件」というものがあるはずだ。
もしその中から2つを上げろと言われれば、たぶんランクインするのがこの2つだろう。
この(1)甲府事件から、今年で48年になる。
そして私はニュースを見るまで、全然知らなかったのだが――
甲府市ではこの2月23日、この事件で町おこしをするためのイベントが開かれていた。
加えて事件50周年を目指し、「甲府星人」着ぐるみを作成するためのクラウドファンディングも行われていたのである(笑)
(ソフビ人形はすでにある)
(⇒ UバクUTV 2023年2月23日記事:「宇宙人は頭が大きく皮膚がしわしわ」 目撃者が48年前の当時を語る 甲府UFO事件で町おこし)
(⇒ UFOで山梨を盛り上げよう~甲府UFO事件50周年にむけて~)
そしてこのイベントには、あの「宇宙人に肩を叩かれた少年」として特定年齢層には知らぬ者のない?「やまさん」こと山畠克博 氏、すなわち当時8歳の「Y君」も講演したという。
これは全国のUFOファンにとって、天皇陛下と対面するより興奮することではあるまいか……
ただ、ちょっと気になるのは、このY君と一緒にUFO及び宇宙人(甲府星人)を超至近距離で目撃したK君は登壇しないのだろうか、ということである。
なにしろK君は、宇宙人に背後から肩を叩かれて「腰を抜かして動けなくなった」Y君を引っ張り上げ、その場から救い出した本物の勇者である。
これは別にからかって言っているのではなく、本当に勇気ある英雄的行動だろう。
私がこの年代の子どもだったら、いかにも一目散に自分だけ逃げてしまいそうだ……と思わずにいられない。
それはともかくこの甲府星人なる「宇宙人」、もちろん懐疑的な目で見ればいくらでも疑える。
(疑うという結論は初めから出ているのだから、当然そうなる。)
この甲府事件の(UFOはひとまず措いて)宇宙人について最も有力な懐疑論は、「見間違え」「勘違い」ということになるだろう。
つまり「身長130センチくらい、顔はシワシワでノッペラボウ状態(しかし口らしきものには牙が3本)、左右に長い耳が伸び、銀色の服を着て腰にはベルト、手袋を装着」というのは、
「農薬散布をしていた小柄な老人」の見間違えであり勘違いだろう、というものだ。
農薬散布をするときは、あの化学防除するときのようなダブダブのスーツをまとい全頭ヘルメットをかぶる。
それがY君とK君には宇宙人に見えた、というわけだ。
さて、みなさん、どうお思いだろうか。
私にはどうも、この事件に限った話ではないが、今までこういう「見間違え・勘違い」説に納得できた試しがない。
率直に言って、「そんな見間違えしますか? そんな勘違いしますか?」と思わずにいられないのである。
農薬散布か何かで化学防除服みたいなものを着た小柄な老人は、確かにいたかもしれない。
しかしそれを、よりにもよって宇宙人と間違えるのか。
だったら少年たちがUFOだと思ったのは、軽トラックか何かなのか。
そんな見間違えや勘違いをするというのは、それこそ超常現象ではないか。
だいたい少年たちも(当時の甲府市にはいたるところにブドウ畑があったらしいので)、そんな格好の老人なんて普段から見慣れていたはずではないか。
いや、私も、甲府星人がウルトラセブンに出てきた「フック星人」とソックリだとは思うのである。
1975年2月23日に2人の少年の身に何かが起こり、それにフック星人の記憶と映像がなぜか重ねられてしまったというのは、可能性が全くゼロでないとは思うのである。
しかし私は、いまだかつて自分自身が幻視・幻覚・白昼夢などというのを経験したことがない。
むろん何かを、Y君とK君が体験したのと同じ距離において、宇宙人やUFOや幽霊と勘違いしたことなど一切ない。
まあ、確かに、自分が経験してないからといって、それが世の中に存在しないと思うのは早計である。
幻視・幻覚・白昼夢というのを実際に経験する人がいる、実際にそういう現象がある、というのはさすがに私も知っている。
だがやはり、「肩を叩かれる」ほどの至近距離で農薬散布の老人と宇宙人を間違えるというのは、何としても信じがたいのだ。
人間は、あなたは、そこまで物事を見間違い得るだろうか。
それが2人もそろって見間違うというのは、あることだろうか。
私は基本的には超常現象に否定的だが、しかし頭から否定はしない。
1975年2月23日の甲府市、1972年9月の高知市で、少年たちの身に何か常ならぬことが起こったのを否定しようとは思わない。
そして、誰でも気持ちは一緒だと思うが……
タイムトラベルというのが実現できたらどんなに素晴らしいだろうとつくづく思うのは、こういう事件を聞いたときなのだ。