週刊ダイヤモンドを私は購読していないが、それでも時に面白そうな記事が目に入ることがある。
今回のそれが、「例の」社外取締役というものについてである。
社外取締役――
おそらくそれは、その会社の中で最も社員の怨嗟の的になっている地位ではなかろうか。
なんたって彼や彼女は、部外者である。
別に大した仕事をやるわけではなく、
その会社で苦節数十年働いたわけでもなく(もちろんその企業での功績などあるわけもなく)、
それでいてとんでもない高給を取っている「雲の上の人」である。
これが「自社の社外取締役」に対する、社員たちのごく一般的な見方だろう。
ところで私は、この社外取締役というものに、かねがね二つの感想を持ってきたものである。
一つは、これは「民営の天下り制度」ではないか、ということだ。
もちろん彼や彼女らは役人ではない(元役人、ということもあろうが)。
よって、どこかの省庁から天下ってくるわけではない。
ではどこから天下ってくるかと言えば、「すでに持っている、それなりの肩書または知名度」というものから会社に下ってくるのである。
聞けばその中でも、「宇宙飛行士」というのは企業から大人気だという。
かの毛利衛 氏は化学・素材メーカー「カネカ」の社外取締役で年報酬1,700万円、
向井千秋 氏は「富士通」「花王」の2社の社外取締役で年報酬3,400万円、
そして山崎直子 氏は光学機器メーカー「トプコン」、成膜装置メーカー「オプトラン」、電気機器メーカー「ファナック」の3者の社外取締役で年報酬3,600万円、
という素晴らしい高給取りらしい。(あくまで推定、ということらしいが。)
(⇒ デイリー新潮 2022年6月27日記事:宇宙飛行士・野口聡一さん、引退後は社外取締役として引っ張りだこ? 山崎直子さんの推定報酬は3600万円)
私には、宇宙飛行士というものが、これら各種メーカーの経営ないし経営監視について特に秀でているとは思えない。
元宇宙飛行士がこれらの経営・経営監視に携わることでその企業の業績なりコンプライアンスが向上するというのは、それこそ宇宙ロケットを飛ばすような飛躍した発想だと思う。
これは、たいていの人がそう思うのではなかろうか。
それでも、現実はこのとおりである。
大手企業に引っ張りだこ、しかもこれほどの高給を得ているようなのである。
それにしても、「年収200万円で豊かに暮らす」というタイトルのムックが大批判を浴び――
日本人がどんどん貧しくなっている、これからさらに厳しくなる、というのが世間の常識になっている中でこうなのだ。
もしかしたら我々庶民は、今度また日本人宇宙飛行士が宇宙に行くなんて話があったら、「落ちろ~!」と念じるべきなのかもしれない(笑)
それは、庶民とは隔絶した大金持ちの高給取りを生み出すだけに過ぎない、とも言えるからだ。
宇宙へ行って帰ってくる彼ら彼女らは、近未来の「セレブ社外取締役億万長者」すなわち上級国民になるだろうからだ。
(長くなってきたので、続く)