プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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時短タイパで浮いた時間は何に使われているか?

 現時点での社会のトレンド・キーワードと言えば、「時短」であり「タイムパフォーマンス(タイパ)」である。

 それはもはや、「世の中タイパが全て」と言っても過言ではないほど勢いのある世間共通の「意識」となった。

 その象徴がテレビ・動画の「倍速視聴」だろう。

(⇒ 産経新聞 2023年1月8日記事:“時短したい”若者の「タイパ」信仰が中高年にも… 2023年も「倍速消費」がさらに拡大しそうな理由)


 とはいえ私には、「何を今さら」といった感覚が拭えない。

 私が昔から(今の言葉で言えば)コスパが悪いと思ってきたのは、「料理を作る」ということについてである。

 料理というのは、作るには非常に手間がかかる。

 あの3分間クッキングでさえ、私にとっては「こんなことやってられない」というほどの手間と準備に感じられた。

 それなのに、食うのは一瞬なのである。

 その時間比は、100対1にも及んだとしても盛り過ぎとは言えない。

 この観点で言えば、おそらく料理というのは、世の中で最もコスパの悪い行為の部類に入る。

 これが2020年代になってやっと世の中一般に広く認められてきたのだから、やっぱり人間の意識が変わるにはそれこそ時間がかかるということだろうか……

 ところで上記引用記事では冒頭に、特に若者の間でタイパ志向が広まってきた要因として、

①供給作品の数が多すぎる

②しかしある程度は内容を知っておかないと、仲間に取り残される(?)気がする

③今の学生は学生は大学の授業に出て、バイトに行き、友人と遊びながらも、就活の準備や資格取得などに励んでる。すなわち時間がない

 の3点が挙げられている。

 ①はわかる。③も(自業自得という気もしないではないが)もまあわかる。

 しかしつくづくわからないのは、②である。

 もしかして世の中には、友人との話についていくために「自分はたいして興味もないのに」サッカーワールドカップを見る人、というのが多いのだろうか。

 それって、とてつもない時間の浪費であり、しかも不要な苦行であると思うのは、私だけだろうか。

 いや、もっと言えば、この「友人たちと付き合う」ということ自体が無駄な時間の使い方の最筆頭ではなかろうか。

 あなたはいったい、大学時代や小・中・高時代の友人と、大人になってそんなに付き合ってますか?


 そして、学生に限らず――

 このタイパ志向によって浮いた時間を、じゃあどんな有意なことに使っているのかというのも疑問である。

 はたして本当に大部分の人が、就活準備・仕事の勉強・資格取得などなどにその浮いた時間を振り向けている、なんてあなたは思っていますか?

 これは前にも書いたが、賭けてもよい。

 どうせ、そんなたいしたことに時間を使っているはずがないのだ(笑)

tairanaritoshi-2.hatenablog.com


 人間の脳は古代メソポタミアから現代まで別に進化してない、現代人は古代人より肉体的にも精神的にも優れているわけではない、というのは常識だろう。

 だからタイパで時短しようとどうしようと、その今の人間が昔の人間より「優れた」生き方をするということはまずない、と思ってよい。

 倍速視聴した作品で心を揺さぶられるとかいうことは考えにくいし、きっと心にも残らないだろう。

 それで空いた時間で何かしても、それもきっと江戸時代の人がやっていたことより有意義だということもないだろう。

 たぶんその大半は、何とはなしにスマホを見ることで費やされるのではなかろうか。

 そして本当にこの時短タイパに有意義な効果があるのなら、その結果は端的に日本のGDP労働生産性が向上することで、答え合わせされるはずである。

 しかしあなたもおそらく、そんなことにはならないと思うだろう……