1月第2週は、成人式(二十歳の集い)の季節である。
1月8日に北九州市で行われた「二十歳の記念式典」において、女性参加者の振袖に墨汁をかけられるという事件が、5件発生したという。
私は統計を取ったわけではないが、この手の事件の被害者はほぼ100%女性だろう。
そして同じくらいの割合で、加害者は男性のはずである。
そう、「男性が女性に何らかの液体をかける」という犯罪は、実にありふれたものである。
私としてはこの手の犯罪を、「液体犯罪」と呼びたい。
「液体犯罪」は、ともすれば痴漢・強姦よりさらに純粋な「男の犯罪」と言える。
今回の事件は「墨汁」であるが、言うまでもなく液体犯罪で使われる液体の大多数は「体液」である。
その体液とは、これまた言うまでもなく、精液か唾液のどちらかだ。
皆さんは、女性が自らの体液(愛液か唾液)を誰かにかけた……なんて犯罪ニュースは見たことも聞いたこともないだろう。
それに反して男性がそんなことをした事件というのは、数限りなく起こっている。
皆さんには(ぜひ、とは言わないが)、「体液 逮捕」というキーワードで自分のデバイスのニュースピックアップ設定をすることをお勧めする。
そうすれば、いかにこの手の液体犯罪が頻繁に報じられているか、呆れるほど知ることができるだろう。
さて、液体犯罪が男の犯罪――女が被害者である犯罪――だというのは、いかにもさもあろうと思われる。
「女性に液体をぶっかけたい」という願望・衝動を男が持っているのは、それはそうだろう、そんなもんだろうとみんな「わかる」からである。
そして男がこんな犯罪をしでかすのは、疑いなく性衝動の現れである――
とは、深く研究しなくてもまず間違いない(そうとしか思えない)。
しかし、そこで私は疑問に思うのだ……
液体犯罪の原因が「女性に液体をぶちまけたい」という男性の性衝動にあるとするなら、それは人類普遍のものであるはずだ。
だったら日本以外の諸国でも、液体犯罪は頻繁に起こっているのだろうか。
ポーランド、クロアチア、アイスランド、モロッコ、ケニア、パラグアイ、アンティグア・バーブーダ、ハイチ、イラン、インド、パキスタン、そしてアメリカ合衆国。
これらの国でも男性たちは、しょっちゅう液体犯罪を起こしているのだろうか。
フランス人男性もベトナム人男性もやはり、液体犯罪を敢行しているのだろうか。
(もしもそうなら、その被害者が女性であることは確実である。)
ここで我々は、知識のなさを痛感せざるを得ない――
我々は海外でのそういう事件の情報を、何も持っていない。
いくらCNNやBBCの日本語通訳版を熱心に視聴したからとて、そういうニュースを聞くことは絶えてないのだ(笑)
いや、もしかしたら……
液体犯罪がこうまで盛行する国というのは、日本だけなのだろうか。
液体犯罪は、日本固有にして特有の犯罪なのか。
だとすれば、その要因は何なのか。
私としては、こんな犯罪形態が日本でだけ盛んであるとは、いささか信じにくい。
思うに、日本人とは「似た者同士」の韓国人の間においても、液体犯罪は盛んなのではなかろうか。
そうすると、中国人の間でも盛んなのではないかとの疑いが生じる。
しかしそうなると、では液体犯罪は「北東アジア特有」の犯罪なのか、それはなぜなのかとの疑問が生じる。
さらにまた、日本・韓国・中国で(最近特に)少子化・非婚化が極端に進んでいるのと、何らかの関係はあるのかとの疑問さえ生じてくる。
私見では液体犯罪には、それだけの「深み」がある。
そして我々はまだ「性嗜好の人類学」というものの、ほんの入口にすら到達していない……との思いを強くするのである。
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