日本の生涯未婚率、すなわち50歳までに一度も結婚したことのない率は、2020年にとうとう男性25.7%(4人に1人)、女性16.4%(6人に1人)に到達したらしい。
1980年には男2.6%、女4.5%だったのと比べれば、驚異的な伸長だ。
(⇒ 読売新聞 2022年6月11日記事:日本人の結婚への関心、依然高いが…男性25%・女性16%が「生涯未婚」)
さて、この1980年の率を見ると、2つの驚きがある。
一つは、男の97.4%、女の95.5%が生涯に少なくとも一度は結婚していたというのは、異常な高率ではないかという「逆の」驚きである。
もう一つは、(一般的な通念に反して)女の方が生涯未婚率が高かったということである。
この後者の方の驚きは別として、前者の方の驚きは、一つの疑念を抱かせずにいない。
それは、世の中の97.4%もの男性が「結婚に向いている」「結婚してもいい」人たちだったとは――
あるいは「心から結婚を望んでいた」人たちだったとは、とても信じられないという疑念である。
それに比べれば2020年の生涯未婚率は、はるかに「正常」に思えるのは私だけだろうか。
まず、男の方が女より率が高いことからして、「一般常識」に合致する。
そして男の4人に1人、すなわちあなたの周りの男性の4人に1人は生涯結婚しない(ついでに言えば女性と付き合うことさえない)というのは、「まあ、そんなもんじゃないの?」と肌感覚で納得できないだろうか。
少なくとも、周りの男性の97.4%は一生に一度は結婚する、なんてことよりは、はるかに納得度が高いはずだ。
そもそも男性には、「一人が好き」な人の割合が女性よりずっと高いように思える。
そしてその割合は、「4人に1人」よりはまだ高いような気がする。
よって、男の4人に1人は生涯結婚しないというのは、妥当な水準――いや、もう少しで真に妥当な水準に到達する、とも言えそうではないか?
むしろ深刻なのは女性の方で、それと言うのも
「女性は男性よりはるかにコミュニケーション能力が高い、友人関係を積極的に保てている」
「だから老後も孤立に陥る危険性が、男性よりずっと低い」
ということが、少なくともごく最近までは公共メディアで(まるで「女性賛歌」「女性の優越性」の一環として)堂々と報じられてきたからである。
それなのに女性の6分の1は生涯結婚していないというのは、実に深刻なことではあるまいか。
これはどう考えても、「望まない独身、不本意な未婚」を続けているのは男より女の方がはるかに数が多い、ということを示唆しているのではないか?
いやしかし、もしかしたら
「女性の方が男性よりコミュニケーションを取るのがずっと好きで、上手」
という通念こそ間違いで、本当は女性の6人に1人くらいはやっぱり一人が好きなのだ、というのも大いに可能性がある。
とはいえその割合は、やはり男性よりは低そうにも感じる。
よって男の4分の1が生涯未婚なら、女の6分の1が生涯未婚というのも、これもまた妥当な水準と言えそうだ。
要約すると、今の日本の生涯未婚率は、むしろ「正常化した」のかもしれない。
40年前のように10人中10人が結婚していた世の中というのは、むしろ「異常」で「間違っている」世界ではなかったろうか。
10人中10人が「結婚に向いている」人だなんて、現代人の常識からは絶対にありえないことである。
そして実際、結婚に向いてないのに結婚して面白くない人生を送った人は、男女とも膨大な数に上ったと思われる。
生涯未婚率の上昇は、そういう悲劇を大幅に削減している面もあるのではなかろうか。