11月6日、岐阜市で例年行われる「ぎふ信長まつり」に、俳優の木村拓哉(キムタク。49歳)が信長役として参加した。
それがものすごい効果となり、来場者は過去最高の46万人(抽選漏れ含め62万人)にも達した。
もう、文句のつけようのない大成功イベントである。
(⇒ 毎日新聞 2022年11月6日記事:信長まつり、武者行列に46万人 木村拓哉さん・伊藤英明さん参加)
さて、これについて思わずにいられないことが二つある。
一つは、織田信長という今や日本史上人気ナンバーワンの人気者が、いかにビジュアル面でも訴求力があるか、である。
特に今回のキムタク信長なんて、信長ファン・信長シンパがイメージする織田信長の顔そのもの、まさにイケメン信長そのまんまではないか。
そりゃこんなイケメンビジュアル信長なら、一目見たいと人が押しかけるのも無理はない?だろう。
(偶然?ながら、織田信長は49歳で死去した。演じた木村拓哉も今49歳である。)
“サル”豊臣秀吉は言うに及ばず、“タヌキ小太り”徳川家康も、ビジュアル面では信長には絶対勝てない。
現実の織田信長が本当にイケメンだったかどうかはさておいて、もう現代の日本社会では、信長は「精悍なイケメン」だというのが確定したイメージなのだ。
このルッキズム社会において、信長人気が秀吉・家康を遠く引き離すのも無理はない。
そしてもう一つ思う(思い浮かぶ)のは、「一将功なって万骨枯る」というコトワザだ。
考えてもみよ――
キムタクという一人の男性が信長になって(30分程度しか人前を行進しないのに)62万人の大観衆を集める一方、
この日本全土では、いったい何人の男性が一人の異性とも(付き合いたいのに)付き合うことなく一生を終えるのか、ということを。
これは近年のビジネス界でさんざん言われる、「勝者総取り」という言葉を地で行くものである。
「世の中の人口のたった1%が、世の中の50%の富を所有する」なんて言葉を思い起こさずにはいられないものである。
もう、勝ち組男性たった一人の「集客力」には、負け組男性が何十万人集まっても絶対太刀打ちできなくなった。
人間の価値というものには、中世ヨーロッパよりもさらに差が付くようになった。
そして、そりゃキムタクを見るために集まってくる何十万人(の中の女性たち)にとっては、そこらの普通の男性なんて、物足りないことおびただしいに違いない。
この「勝ち組男性への憧れと賞賛」が、「女性が男性を見る目が厳しくなっている」現象と男性未婚率の天井知らずな上昇に、繋がっていないなんてことはないだろう。
一将功なって万骨枯る――
このコトワザは、現代では
「一人の男性がものすごい集客力とフィーバーを集める一方、何万人もの負け組男性は鼻にも引っ掛けられないままとなる」
という意味に解した方が良さそうである。