5月21日現在、日本でのコロナ第4波の勢いは衰えない。今度は沖縄県が緊急事態宣言下に入った。
しかし国際オリンピック委員会(IOC)調整委員は、「(東京で)緊急事態宣言が出ていようと出ていまいと、我々が取っている全ての対策で安全な大会は可能だ」と語った。
(⇒ ロイター 2021年5月21日記事:東京五輪、緊急事態宣言下でも開催とIOCのコーツ氏)
もはや東京オリンピックに中止はなく、開催されるのは確実である。
とても不謹慎なことではあるが、今回のオリンピックがインドで開催されると決まっていたらどうだっただろうかと思う。
今のインドのコロナ惨状は万人が知るところであるが、それでもIOCは強行開催しただろうか。
いや、たぶん強行開催しただろう。
そして今回の東京での強行開催が、未来の前例となるだろう。
今後また世界的感染症が流行しても、
印パ核戦争でどっちの国も消滅しても、
イスラエルとイランが戦争しても、
やっぱり2021年の東京が前例となって開催されるに違いないだろう。
しかしもちろん今の日本では、オリンピックなんて中止すべきだというのが大半の意見である。
にもかかわらず日本政府(菅政権)がそんな気配を見せないのは、
そんな態度でいれば次の選挙で大敗北するだろうことがわかっているのに中止を言い出さないのは、一説には
「いざ開催されて日本人選手が(特に池江璃花子が)金メダルを取れば、
国民は大喜びして手のひら返しするだろう、
開催して良かったと改心するだろう」
との期待があるからだ、とされる。
あなたはこれを、「そんなわけない」「国民はそこまでバカじゃない」と笑殺するだろうか。
おそらく、オリンピックは中止すべきだと思っている人の大半は――
「そんなことになるわけない」と口では言ったとしても、
「本当にそうなるかもしれない」という一抹の不安は持っているのではなかろうか。
政府がそんな見立て・期待を持っているとして、国民の多くはまんまとそれに乗せられるかもしれない、と思いはしないだろうか。
誰の目にも明らかなことだが、もちろん開催となればテレビはそれを「見るべきもの」として放送する。
ましてや日本人選手が金メダルを取れば、感動と共感の嵐を視聴者に撒き散らすように報じるのはわかりきっている。
そんなのに国民は乗せられない、と断言できる人は、およそ日本人であればほとんどいないのではなかろうか。
実際我々は、テレビで報じられれば大勢の国民が反響を起こすなんてことを、何度も何度も見てきている。
テレビ番組を見て感動したり共感したり「涙が止まらな」くなるなるような人は、ネット上だけでも大勢観察できる。
そしてワクチン接種が始まれば、(別に急いで受けなくてもいいような)高齢者たちが予約に殺到するような国民的習性を、何度も何度も見てきている。
もしかすると政府自民党の読みは、正しいのかもしれない。当たっているのかもしれない。
オリンピックの放映が始まれば、たやすく国民は手のひら返しするというのが正解なのかもしれない。
これは、外国からも大いに注目されるはずの点である。
さらにまた、これこそ「前例」として注目される点である。
もし、日本国民が手のひら返しするというのが正しい結果であるならば――
今後の開催国で何があろうと起ころうと、東京の前例を引き合いにオリンピックは断行されることになるだろう。