プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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キリン、成田“集団自決”悠輔氏の広告起用取下げの怪

 キリンは今月から、缶チューハイ「氷結無糖」のWEB広告に、あの成田悠輔 氏を起用していた。

 ところがもちろん成田氏は、2021年に「高齢者は集団自決するしかない」と発言して話題になった人である。

 当然ながらこの広告起用には批判が集まり、結局3月12日、キリンは彼の広告を削除した。

 キリンは取材に対し、「幅広い立場の方に、氷結無糖の良さをご自身の言葉で語っていただくことを目的に企画しWEB広告に起用しました」、

 「過去に成田氏の発言の中にあった表現が比喩か否かは別として、過度な表現があると判断しました」

 「今回のWEB広告に対して、様々なご意見を頂戴したため、総合的に判断し、一部投稿を取り下げることにしました」

 と答えたとのこと。

(⇒ まいどなニュース 2024年3月12日記事:キリン、成田悠輔氏の「氷結」広告を取り下げ 「高齢者は集団自決」発言に強まる批判 「過度な表現あった」と説明)


 これ、本当に不思議なのだが……
 
 キリン広報部もキリンと契約した広告代理店も、成田氏が(近々2年前に)こんな発言で有名になった人だというのを、まさか知らないはずはない。

 むろん知った上で広告起用したわけであり、たぶん本当の起用理由は「なかなかエッジの効いた人みたいだから」というものだったと思われる。

 これは言うまでもなく火中の栗を拾うようなものであり、それを見た人たちから批判が来るのは、それこそ火を見るように明らかだ。

 広告代理店の社員だろうと誰だろうと、こんなことが予測できないわけはない。

 当然ながら、今回の広告の企画会議ではそういうリスクが採り上げられたに違いなく――

 そこでの結論は、当然ながら「多少の批判は覚悟する」「批判があっても継続する」というものだったに決まっている。

 ……ところがどっこい、この「来るに決まっている批判」が来た途端、「過度な表現があると判断し広告取りやめ」である。

 私はやっぱり皆さんと同様、いろんな意味で「なぜだ?」と思わずにいられない。

 なんだか、キリンほどの大会社のビジネスパーソンと言えども、この程度のもんなのかと思ってしまうのである。

 しかもこんな例は今回が初めてではなく、名だたる大企業が何度も何度もやらかしている。

 そんなのを経て、いまだ再生産が止まないのだ。

 もしかして大企業って、これだけ多くのビジネス理論本・マーケティング本・プロモーション理論の記事が世の中には氾濫しているにもかかわらず――

 単に「テレビやネットで有名だから」という理由で、どの人物を広告起用するかを決めている(しかもそれに関係者みんなが同調する)のではないか、それほど単純な世界なのではないか、と誰が疑わずにいられよう。

(⇒ 2019年1月6日記事:そごう・西武の女性広告が炎上-なぜ人は百貨店のCMに政治的メッセージを込めたがるのか)

(⇒ 2020年8月19日記事;Amazonプライム、三浦瑠麗CM動画を削除-アマゾンもまた美人資本主義から逃れられぬ)


 それにしても、本当に奇怪である。

 「かくすれば、かくなる」ことは、ほとんどの小中学生にさえわかりそうなものなのに、それが大企業の企画会議を何度も通ってしまうのだ。

 こんなことが絶えることなく頻発しているのだから、よく悪口を言われる「日本が勝てるはずもないとわかりきっている太平洋戦争に突入した」経緯というのも、別に現代人に悪口を言われる筋合いはない、なんて感じてしまうのである……