4月15日午前11時30分ごろ、和歌山市の雑賀崎漁港で衆議院和歌山1区補欠選挙の応援演説を行おうとしていた岸田首相に爆発物が投げつけられ、しかし死傷者はなく、投げた24歳の男が取り押さえられた。
たちどころに誰もが思ったに違いないが、これは昨年7月8日の「安倍晋三襲撃・殺害事件」とソックリである。
二番煎じというか二匹目のドジョウというか、まさに「ザ・模倣犯」とはこのことだ。
自殺報道が流されると自殺者が増えるというが、これはもちろん政治テロにも当てはまることが、今回も立証された。
さて、この事件でまず感じるのは、岸田首相が演説しようとした会場が「漁港」であることについてだ。
これは世界標準で考えると、かなり異常・異質なことではないか。
べつだん漁港をバカにする気は毛頭ないが、それでも都会の繁華街とはかけ離れている場所である。
一国の宰相が、地方の一漁港にわざわざ行って演説する――
そういうのは、他の国でも一般的なことと言えるだろうか?
こういうのは確かに、日本の美風と言えるのかもしれない。
辻説法の伝統というか、「高い地位にある人」がこんな小規模な(数百人レベルの)庶民のいるところに「降りてきて」話をするのを、日本人は「いいこと、美しいこと」と感じるのは事実だろう。
これこそまさに、「世界がうらやむニッポン」の姿なのかもしれない。
しかし当然、警備上は大問題である。
今回はむしろ漁港が演説会場であったのは、屈強な?漁師たちがすぐそばにいて取り押さえることができた、という好結果に繋がったようだ。
だが、そんな幸運がいつもいつもあるわけではない。
警備側にしてみれば、街頭演説なんかやめてくれというのが本音に違いない。
ところで取り押さえられた24歳の男だが、警察の取り調べに黙秘しているらしい。
よって、今回の襲撃が政治的理由なのか「目立ちたい」理由なのか、まだ確かなことは言えない。
しかし間違いないと思われるのは、これが安倍首相襲撃事件の「感化犯」だということである。
歴史にもしもはないと言うが、もし安倍首相襲撃事件がなかったら、この人は岸田首相襲撃事件を起こしただろうか。
もしかしたら全く別の動機をもって、起こしたのかもしれないが――
しかし世間からはそう思われないというのが、こうした二番煎じの最大の「リスク」だといっていいだろう。
つまり二番煎じ犯はオリジナリティのない、人に「影響されやすい」「感化されやすい」残念な人、という低評価を付けられるリスクから逃れられない。
そして、あるいはそういう風に世間が露骨に思うこと、意思表明することこそが、こうした模倣犯を出さないため最大の効果があるのかもしれない。
首相や有名人を襲撃しようなんて人が、そうした評価に無頓着であるとは、まず考えられないのだから……