プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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安倍元首相の銃撃死-暗殺の技術的側面(下)

(5) では対策は?

  もちろん、街頭演説を止めることである。

  街頭演説中の政治家を狙うことはたやすく、ほとんど誰でも(決意さえすれば)実行できる。

  今回の自作銃は3~6ⅿ以内の至近距離からの銃撃であったが、近くのビルから猟銃を使うことももちろんできる。

  (拳銃という手もあるが、その必殺距離はこのたびの自作銃と大差ない。)

  警備を強化すると言っても、では「街頭演説程度」のために近くのビルを予め捜索して警官を配置し、集まってくる市民の持ち物検査をするのだろうか。

  そして、もしそんなことをするなら公平上、全ての候補者の街頭演説でそういうことをしなければならなくなるはずである。

  そんな人員が、警備側にあるわけないのだ。

  だから対策としては、街頭演説なんてやらないに限る。

  演説はネット配信するに限る。

  だがそんなことになったら、確かにネット論客やユーチューバーなんかに非常に有利な選挙戦にはなりそうだ。

  何だかんだ言っても街頭演説は(特に大物政治家の応援演説は)選挙報道の華であり、意外とそれを見た人の投票行動に影響を及ぼしている気もする。

  そしてそもそも、観衆のいないところでの演説がどれほどの熱を帯びるのか、という根本的な問題もある。


  政治家を暗殺しても、安倍元首相ほどの大物を暗殺しても、世の中は何も変わらないという意見がある。

  しかしそれは大間違いで、もし暗殺の脅威によって街頭演説というものがなくなったとしたら、政治家が人前に出ることがほとんどなくなったとしたら――

  日本の選挙や当選者の顔ぶれ、ひいては政治そのものの性格も大きく変わるだろう。

  それは暗殺の勝利であり、銃弾の勝利である。

  そして、あと二・三件こんな暗殺事件が起きれば、もしかしたら本当に暗殺が勝利するかもしれない。

  はたして今回の暗殺事件は後世から、日本を変えた号砲と言われることになるのだろうか……