プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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安倍元首相の銃撃死-暗殺の技術的側面(中)

(2) 街頭演説中の政治家は、特に狙いやすいターゲットである

  たとえ鉄壁の警備に守られた現役の首相だろうと、非常に無防備になる時がある。

  それが今回のような、街頭演説の最中である。

  あなたもこれまで何度となく政治家の街頭演説を見たことがあるはずだが、絶対に思ったことがあるだろう――

  「今ここでライフル銃で狙撃すれば、簡単にこの人を殺せるんじゃないか」と。

  街頭演説中の政治家は、車の上とか(今回の安倍元首相のように)とにかく台の上に立つ。

  非常に目立つ、理想的なターゲットである。

  しかも演説を聞きに集まってくる人たちのボディチェックがされるわけでもない。

  遠くから銃で狙うのもできるし、そんな銃は持ってないなら手製爆弾を投げてもよい。

  実際、今までに(日本では)なかったのが不思議だと思うのである――

  街頭演説中の政治家、これほど狙撃の的になりやすいものはないというのに。


(3) 今回の犯人は、偽装に秀でていた

  今回の犯人が使ったのは、報道によると自作の銃だそうだ。

  報道映像を見る限り、それは銃身と銃床を切り詰めて短くした散弾銃の改造で、横に二本の重心が並んだ二連発式のように思える。

  そして確かにこれは、「水筒」か「カメラの望遠レンズ入れ」に見える。

  それを肩から下げていても、いや「カメラのように構えた」としても、それを「危ない」と感じるのはかなり難しいだろう。

  しかし私はこれを、「元海上自衛隊員」だから考え付くことだとは思わない。
  
  むしろこんなことは誰でも考え付くことで、ゴルゴ13でも読んだことのある人は容易に考え付くのではないか。

  これもまた、「街頭演説中の政治家を狙撃する」こと自体と同じく、誰でも考え付くのに今までやられたことがない(だから警戒もしない)というものの例だろう。


(4) 街頭演説中のSPは当てにならない

  これはSPの悪口ではない。

 「政治家が街頭演説しているとき」のSPは、当てにならないということだ。

  今回のSPはわずか1名、その他に地元県警の警察官数人が安倍元首相の警護に当たっていたという。

  その人たちの全員が安倍元首相と同じ方向を向いていて、安倍元首相の背後に立ってその背後を向いて立っていた人は誰もいなかった、という報道もある。
  
  事実だとすればこれは確かに落ち度だが、しかしここでは、そういう「背後を警戒しているSPが一人でもいた」としてみよう。

  はたして彼は、「怪しそうな人」を真正面に見たからといって――望遠レンズみたいなものを両手で構えた人がいたからといって――、飛びかかってその人を押さえつけるだろうか。

  演説中の政治家の背後で騒ぎが起こる、乱闘が起こる。

  もちろん演説は中断し、台無しになる。

  それでもし、SPの判断が勘違いだったらどうするのか。

  そのSPが賞賛・評価されることは、絶対にない。

  当の政治家が怒り狂い、SPの上司も怒り狂い、その報道を見た者もまた、SPを弁護することはまずないだろう。

  それともあなたがSPだったら、たとえ勘違いかもしれなくても目の前の(撮影しようとしてるだけの善良な市民かもしれない)人を、敢然と制圧しにかかるだろうか?

  そんなことはしないだろう、と考えるのは理に叶っていると思われないか。