プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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「ドバイ詐欺」をあなたは心底笑えるか-ロマンス詐欺はいまだ死なず

 「ドバイ詐欺」というものが、近年急増しているらしい。

 ドバイと言えば、今の日本において「金持ち・華やか」のイメージとイコールで結ばれる地名である。
 
 ドバイは国でなくアラブ首長国連邦UAE)の一都市なのだが、しかし日本人にとっては、アラブ首長国連邦よりも身近で知名度のある名前でもある。

 ずっと前から「石油成金」として著名だったサウジアラビアは別として――

 中東の都市の名を聞いて「超金持ち」と打てば響くように日本人が連想するようになったのだから、これだけで「時代は変わった」と感じるには充分な気がする。

 だからなるほど、詐欺で掲げる名前としてはドバイはうってつけなのだろう。

(⇒ 毎日新聞 2021年4月24日記事:「あなたと同姓の富豪が死んだ」 周到な「ドバイ詐欺」相次ぐ)

 
(⇒ 在ドバイ日本国総領事館:詐欺被害防止のために~資料編~)


 在ドバイ日本総領事館によると、ドバイ詐欺には大きく4種類ある。

「金融機関を騙る」

「王族や政府を騙る」

「高利益の商取引を提示する」

「ロマンス(遠距離恋愛)を演じる」

 ……このうち「金融機関」と「高利益」はともかくとして、「王族」「ロマンス」ともなると、

「こんなの引っかかる奴がホントにいるんだ」

 と、被害者の方をバカにする人が大半だろう。

 まさに「ダマされる方が悪い」と感じる方が、むしろ一般的だろう。

 ロマンス詐欺と言えば、その日本における最高傑作は「クヒオ大佐事件」である。

 詳細は省くが、この男はアメリカ海軍の軍人クヒオ大佐を名乗り、日本人女性をロマンス詐欺に引っかけた。

 なんと「今、ジェット戦闘機の中から電話してる!」などと言ったこともあるらしい。

 これでまだダマされるんだから、被害者はよっぽどバカに違いない……

 と、普通の人は普通に思う。


 だが、である。

 日本でも日々オレオレ詐欺とかなりすまし詐欺とか、色んな種類の詐欺話にダマされている人は実在する。

 その人たちもほぼ全員が、「そんな詐欺」にダマされる人をバカにしていたに違いない。

 だから私も、そしてあなたも、いざ自分が詐欺のターゲットになったとしたら、まさにそのバカになってダマされてしまう可能性は非常に高いと思っている。

 これは交通事故に似ていて、「なんでこんな所で事故を起こすのか?」と不思議に思うような場所で、実際に事故は起こっているものである。

(たぶんあなたも、そういう所で単独事故くらいは起こしたことがあるのではないか?)


 人は、ウマい話にダマされるものである。

 どんなにそういう詐欺話のことを聞いたことがあっても、いざ自分が「主人公」になると、いとも簡単に「これは本当かもしれない、こんなチャンスを逃したら一生後悔する」と思ってしまうものである。

 これを自制できる人は、きっと思ったよりも数が少ない。

 
 そう、「自分だけは(こんなバカな話に)引っかからない」と確信するのは――

 ちょうど中学生が、「学校にテロリストが乱入してきても、自分が活躍して撃退する」ことを夢想しがち?なのと共通するものがあるかもしれない。

 その中学生は、ものすごく高い確率で活躍できない。

 活躍どころか逃げることさえ怖くてできず、みんなと一緒に這いつくばってガタガタ震えて心臓がドキドキするのがオチである。

 しかしそれがわかっていても、人間は「テロリストを撃退する自分、そうでなくても上手くやる自分」を想像せずにはいられない。 

 そう思えば、「紛争地域で孤独に任務に従事する(ニセ)軍人」とロマンスに陥って送金する女性のことを、笑ってばかりはいられないだろう……