プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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自民党選挙3連敗と「東京五輪と共に死す」の奈落

 4月25日、次期衆院選の重要な前哨戦と言われる3つの選挙に、自民党が全敗した。

 ①衆議院の北海道2区補選、

 ②参議院の長野選挙区補選、

 ③参議院広島県再選挙。


 このうち①は候補者すら立てずに不戦敗、

 ②は立憲民主党の「羽田王国」を崩せずに敗北、

 ③は自民党の元官僚がフリーアナウンサー女性に敗北した。

 さて、①は論外として――

 ②の「羽田王国」すなわち世襲議員制の側が勝つというのは、それはそれでどうかと思う。

 しかし言うまでもなく自民党側にも世襲議員制は掃いて捨てるほど根付いているので、この点どっちもどっちである。

 ③については、例の河合案里(とその夫で元法務大臣!の河井克行)の選挙買収事件で再選挙となったものだが、むろん自民党には大逆風が予想されていた。

 こう考えてみると、この3連敗は十分に予想の範囲内だったはずではある。

 だが自民党にとって、③だけは「絶対に負けられない戦い」であり「それでも勝てる戦い」だったはずだった。

 広島県は(被爆地であり左翼が強いのかと思いきや)、日本に冠たる「保守王国」であるからだ。

 そして結果的に、フリーアナウンサーの宮口治子(はるこ)氏(45歳)と元官僚の西田英範(39歳)氏の得票差は、ごくわずかな接戦であった。

 ついでに言えば、投票率は22%程度と、なんと3割にも届かない率であった。


 これは自民党にとって、2つのことを意味している。

 一つは、いつもなら自民党に投票するはずだった相当数の人たちが――

 「さすがに今回は自民党には入れられない。しかし、だからと言って、他の誰にも入れる気にならない」

 と考えたに違いないことである。

 つまり保守王国は、まだ死んだわけではない。

 それこそ「ほとぼりが冷めれば」、また自民党議席を奪回する可能性は充分である。

 そしてもう一つは、自民党には――

 「自民党が何をやっても、とにかくひたすら自民党にだけ投票する」という人たちが、まだまだたくさんいることである。

 これは安倍首相が言っていた日本の「岩盤規制」になぞらえれば、「岩盤支持層」と言ってよかろう。

 こういうのを持たない、あるいは持っていても規模の小さい野党にとっては、この岩盤支持層はうらやましい限りだろう。

 しかしむろん、この岩盤支持層というのはイコール高齢者のことである。

 これから次第に、数を減らしていく人たちである。

 野党にとっては、近未来の高齢者たちを「とにかく自民党だけはダメだ」とする「反自民岩盤層」を作っていくことが、最大の課題であり効果的な策となるはずだ。


 ところでこの広島決戦に自民党が候補に立てたのは、39歳の元官僚であった。

 私など「元官僚」というだけで民衆の脊髄反射的な反感を買うのではないかと危ぶむのだが――

 それは自民党もそう思うのかどうか、とにかく年齢は39歳という「若いの」を選んだ。

 しかし私見では、「若さ」と「元官僚」というのは、相性が悪いと思うのである。

 若いのを立てるなら、官僚なんかやったことがない民間人を選ぶべきだと思うのである。

 それでもあえて元官僚を立てるなら、それこそ影響力のあるパイプになりそうな(定年退職したくらいの)年配者を立てるべきではあるまいか。

 なんだか今回、自民党は「二兎を追う者は一兎をも得ず」を地で行った気がしないでもない。


 さて、しかし本番は――つまり衆院選は――今からである。

 思うに自民党は、その本番でこそ大敗北を喫するのではなかろうか。

 その最大の要因は(今までこのブログでも何度も言ってきたが)、むろん「東京オリンピックの強行」である。

 コロナ対策が不十分だとか後手後手の行き当たりばったりだとかは、まだしもである。

 こんな事態は今まで誰も経験したことがないのだから、まだしも国民はこれを天災として理解するのかもしれない。

 しかし「それでも、こんな状況でも」オリンピックをやるとなれば、これはもう自爆的人災としか見えないだろう。

 私には、これが見えないほど自民党が愚か者集団だとは思わない。

 だが歴史上よくあるように、誰にでも見える破滅の道を驀進していく集団というのは、けっこう実在するのである。


 自民党は、オリンピックと共に自爆する。

 しかし自民党には、何があっても投票してくれる岩盤支持層がある。

 いったんは野党が政権を取り、それをまたしばらくして自民党が奪還するという、

 最近もあったような展開が、また繰り返される可能性は濃厚である。