中国は河北省で、「羽毛のある小型翼竜」の化石が見つかった。
その翼竜は、約1億6千万年前のジュラ紀に生息した翼長40センチ程度のものらしい。
翼竜は2億年以上前に生じ、恐竜絶滅と同じ6500万年前に滅んだとされているから、翼竜の歴史の中では初期に属する。
しかし復元イラストを見る限り、どうも「毛が生えてフサフサ」というのはわかるが――
鳥のような「羽」があったようには見えない。
「羽」というのは羽軸があり、そこから両側に伸びた毛どうしが微細なカギで連結するように作られ、指でどんなに乱そうとも扱けばすぐ元の美しい形に戻る、あの羽根のことである。
(道に落ちているカラスの羽を、何に使うアテもなく家に持ち帰っている男子は、今でもとても多いものと信ずる。)
(⇒ 朝日新聞2018年12月18日記事:爬虫類の翼竜にもフサフサの羽毛 中国で化石見つかる)
「毛を持つ恐竜」というのは、今では別に珍しくない言葉になった。
それどころか、白亜紀の恐竜が毛に包まれていたのはごく当たり前のことともいわれている。
だから(初期の)翼竜が毛を生やしていたとしても、それほど大きなインパクトはない。
しかしここで思うのは、「ますます翼竜は鳥に似てきた」という感想である。
一般に翼竜は、滅ぶべくして滅んだと受け止められている。
同じ空を飛ぶ生物ではあるが、鳥類に比べれば比べものにならないほど「劣る」と――
たぶん翼竜は鳥のように(中でもハチドリのように)ものすごい早さで「羽ばたく」ことはできなかったろうし、だからスピードも機動性も劣ったろう。
翼竜は鳥に、負けるべくして負けた。
あまりにも魚そっくりの「魚竜」が絶滅したのはなぜなのか不思議がる人も、翼竜が鳥に生存競争で負けたことの方は、すんなり受け入れることが多いのではないかと思われる。
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しかしながら、鳥類が出現したのは約1億5000万年前とされている。
つまり、今回見つかった「羽毛翼竜」とほぼ同じ時代に生じている。
翼竜と鳥類の生存期間には、1億年以上もの重なりがある。両者は1億年くらいは並行して生きていた。
もし翼竜と鳥類にそんなに飛行性能に差があるのなら、もっと早く翼竜は絶滅していて良かったのではないか。
鳥類が翼竜に追いつき追い越すにはそれだけの時間がかかった、ということなのかもしれないが、本当にそうなのだろうか。
そしてまた、1億5000万年前には既に「毛」を生じさせていた翼竜は、なぜ鳥のような「羽根」を発達させなかったのか。(時間は充分あったはずだ)
なぜせめて一種くらいは「はばたき飛行」に移行しなかったのか――
私には魚竜が魚に「劣る」面や理由がよくわからないし、
翼竜が鳥に「劣る」面や理由もイマイチわからない。
翼竜が滅ぶ環境変化は、鳥類も滅ぼすように思えて仕方ない。
(白亜紀末期にも小型翼竜はいたようだから、「サイズが大きすぎた」ことも決め手にはならないのだろう。)
今回発見の「毛むくじゃら翼竜」、その後は結局どうなってしまったのだろう。
ただ毛が生えているというだけで白亜紀末期までそのままで、鳥のような羽毛はついに獲得しなかったのだろうか。
生物史の中で「目」が何度も独立して生じてきたように、
羽毛というのもただ鳥に一度だけ生じた奇蹟ではなく――
空を飛ぶ生活をしていれば、まして既に毛が生えていれば、割とたやすく生じそうなものに思えるのだが……