日本時間の7月2日、アメリカのトランプ大統領が自らツイッターにコラ動画を投稿した。
マクマホンCEOの顔に「CNN」のロゴをかぶせた動画である。
#FraudNewsCNN #FNN pic.twitter.com/WYUnHjjUjg
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 2017年7月2日
トランプはCNNにラリアット(のような形)で体当たりし、倒れたCNNへ馬乗りになってパンチをかます。
そして最後には「FNN-Fraud News Network」(ウソのニュース局)の表示もするという念の入れよう。
こんな動画を現職のアメリカ大統領が投稿するのだから、つくづく時代は変わった。
こんなことをするのを“大統領らしい振る舞い”と言う人は誰もいないが、“トランプ大統領らしい”とは誰もが思う。
しかしこれ、まさかトランプ大統領自身が作ったのだろうか。
常識的には誰かに頼んで作ってもらった(作らせた)ものだと思うが、しかし出来映えはそんなに上質でもないようである。
(コラ動画なんて作れない私が言うのも何だが。)
ただ、もしこれをトランプ自身が作ったとすれば、たちまち「ヒマなのか」と嘲笑が飛んできそうである。
しかし大統領といえども当然休日はあり、その時間にゴルフをするかコラ動画を作るかというのは単なる趣味の違い/時間の使い方の違いというだけなので、そんなに叩くようなことでもないだろう。
それにしても歴史上、ここまでメディアとはっきり対決する政治家がいただろうか。
普通は政治家というのは、どんなに(実は)横暴な人物でも、メディアに対しては“おもねる”態度さえ取るものである。
メディアに露出すること、良く扱われようとすること、これらは本人やスタッフが最も腐心することの一つであるはずだ。
それなのにトランプは完全にその逆を行っている。
しかもトランプがこういう人物であることは大統領選の前からわかっていたはずなのに、それでも彼は大統領に当選した。
たとえロシアから大統領選へのサイバー介入があったにしても、アメリカ人の半分くらいはこの人を支持しているわけである。
しかしいったいCNNは、全国放送のテレビメディアは、いったいどうしてしまったのか。
これら巨大メディアは「第四の権力」と呼ばれるほど、国民に大きな影響力を振るってきた(誇ってきた)はずである。
彼らを敵に回すことは、政治家にとって致命傷だったはずである。
なのになぜトランプは、ここまで好き好んで彼らにケンカを売るのだろう。
トランプは高齢(現在71歳)なのでハナから再選を狙ってない、だから好き勝手ができる、というのもあるだろう。
日本の朝廷の歴史をなどを見ているとなかなかそうは思えないが、世界の歴史的に見て、王と貴族は「同類」であるよりむしろ「敵同士」であることの方が通常である。
現代の庶民は、全国テレビ局に出ているキャスターやジャーナリストらは「エリート」で「貴族」だと感じている。
どんなに庶民の味方みたいなことを言っていようと、彼ら彼女らの年収は自分たちのをはるかに超えていることを知っている。
もちろんそれは「努力」と「才能」の結果であり当然の果実なのだと彼ら彼女らは反論するが――
もちろんそれは「努力」と「才能」の結果であり当然の果実なのだと彼ら彼女らは反論するが――
しかし、たまたまそういう才覚を持って生まれてきたという意味で、やっぱり彼ら彼女らは現代の貴族――すなわち「家柄貴族」でなく「才能貴族」「能力貴族」なのである。
ただ取材だのテレビの中でくっちゃべるだの“ラクな仕事”で大金を稼ぐセレブたちに、地味な人民は反感を持っている。
そういう貴族を公然と叩いてくれる“異色の貴族”(トランプももちろん貴族の一人である)が出てくると、これこそ「我らの代弁者、我らの真の王」と感じたくなってしまうのは当たり前の心性だろう。
そして多分こういう心性は、全世界共通なのだ。
だからいずれ日本でも、「日本のトランプ」と呼ばれる人物が出てくるに違いない。
それは事業の成功者だとか高い資格の保持者だとか、とにかく貴族の一員でありながら、メディアを(しかしさすがに、特定の局や新聞に限ってだろうが)積極的に攻撃する人物である。
元大阪府知事・大阪市長の橋下徹などは、その最右翼と言えようか。
元大阪府知事・大阪市長の橋下徹などは、その最右翼と言えようか。
テレビにとってネットは敵か、共存すべき相手か――というのはネット時代の初期からの命題ではあったが、どうやら「敵ではない」「敵にはならない」という見方だけは間違いだったようである。
ネット基盤の政治家が、そしてもしかしたらプロレス(流のやり方)が、新時代のスタンダードになる……
あるいはトランプ一代の徒花で終わるのかは、これまたプロレス的な見方だろうか。