プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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もしイスラム国がトランプを暗殺したら

 日刊ゲンダイweb版によると、イスラム国(IS)が1月20日の大統領就任式を狙い、トランプ次期大統領の暗殺を図っているそうだ。

 もちろんイスラム国はそういうことをするのが仕事なので、別に驚くようなことではない。

(しかし、「暗殺者を送り込もうとしている」のではなく、「米国内にいるIS支持者に対して暗殺を呼びかけている」らしい。

 “自分でやれよ”と反射的に感じてしまう。)


 言うまでもないがマスコミ的には、大統領が暗殺されるかもしれないという方がはるかに好ましい。

 現オバマ大統領就任のときにも、“オバマは暗殺される!”と書かれたアオリを見た憶えのある人は多いだろう。暗殺ネタは盛り上がるのだ。

 しかし、なるほど大統領就任式には大統領は必ず外に身をさらすので、暗殺の危険性は大きいものの――

 そんなこと言ってたら、大統領が屋外に出たり公衆に身をさらすときはいつもヤバいはずである。


 素人目には、要人の暗殺って「やってやれないことはない」ように思える。もっと起こっていても不思議ではないように思える。

 相手が何かの式典やイベントに出るとわかっていれば、長射程の高性能ライフルでも使ってどこかのビルから撃てばいいんじゃないかと思う。

(自分が生還を期さないなら、もっと大胆なこともできよう。

 安倍首相や天皇陛下を暗殺することも、意外と難しくないかもしれない。)


 しかしそれでも暗殺はそうたびたびは起こらないので、やはり警備が厳重かつほぼ完璧であるか――

 そもそも、暗殺をしようという意欲のある人がそんなにいないのだろう。
 
 だいたい私は、イスラム国がトランプを暗殺してどんな利益があるのかよくわからない。

 あるとすれば「オレらはアメリカ大統領だって殺れる」と胸を張れることであり、確かにそれで権威は高まる。

 しかしそれなら暗殺するのはヒラリーだって誰だってよかったことになり、ますますイスラム国はゲンダイのイスマーイール派(例の“山の老人”率いる暗殺集団)に似てくる。

(⇒ 2015年11月15日記事:パリ大規模テロと「暗殺教国」イスラム国  テロで日常は砕けない)

(⇒ 2015年11月15日記事:「テロ教国」イスラム国のゆくえ)

 

 さて、ちょっと気になるのは、本当にトランプ暗殺が成功したらどうなるのかということである。

 まずアメリカの憲法により、新大統領の職務(任期)開始は、大統領選挙一般投票翌年の1月20日正午(アメリカ東部標準時)からとなっている。

 そしてその前にやはり憲法により、大統領の職務を忠実に遂行する宣誓を行わなければならないと定められている。(ウィキペディアアメリカ合衆国大統領就任式」による。)

 では、トランプが正午より前に殺されたらどうなるだろう。

 トランプはまだ大統領でないので、その副大統領内定者が繰り上がって大統領になるわけではない。

(もちろん、大統領選で敗北したヒラリーが大統領になるわけでもない。)

 となると、まだその時点ではオバマが大統領なので、オバマが引き続き(次の大統領選が行われ、次の大統領が就任するまで)大統領を務めるのだろうか。


 アメリカはケネディを筆頭として何度も大統領暗殺を経験してきたが、しかしいずれも在任中の暗殺であって、就任直前に暗殺されたなどという例はない。

 そしてこれ、イスラム国にとっては――

 大統領選に勝利した候補者をそのたびに(共鳴者の自爆攻撃ででも)殺していけば、アメリカをひどく混乱させることができるのではないだろうか?

 この手を使えば現大統領はずっと“臨時に”留任し続けることになるが、それでは世論もさすがに収まらなくなってくるだろう。

 大統領選の勝利者を暗殺するのは、現大統領を殺すよりずっと難易度が落ちるはずである。


 一方、暗殺が正午を過ぎて行われるなら、トランプの副大統領内定者であるマイク・ペンスが繰り上がって大統領になる――

 いやしかし、これが私にはわからないのだが、その時点ではまだペンス氏は副大統領に正式任命されていないのではないか?

 正午を1分でも過ぎた時にトランプが爆殺でもされれば、いったい誰が新大統領(臨時大統領)に就任するのだろう。

 やっぱり実務的に、オバマが続投するのだろうか。それは法的に大問題ではないのか。

 そしてトランプ陣営やその支持者ら国民は、それでいいとするのだろうか。


 もし1月20日にトランプ暗殺が起きるなら、それが正午より前か後か……

 どうも不謹慎ながら、野次馬的な興味が沸いてくるというものだ。