10月27日夜、アメリカのトランプ大統領は、イスラム国(IS、ISIS)の指導者であるアブーバクル・バグダディを米軍特殊部隊が殺害したと発表した。
私はこのトランプ大統領の発表を、スカパーのCNN-Jで見たのだが――
その同時通訳でさえ、「彼は犬のように、臆病者のように死んだ。子どもを巻き添えにした」と言っていたので、英語の原語では相当に罵倒的な言葉遣いをしたのだろう。
バグダディはシリアのイドリブ県バリシャ村(トルコとの国境近く)という所で捕捉され、ヘリ・軍用機・地上部隊の急襲を受けたという。
そして、着ていた自爆ベストを起動させて爆死させたらしい。
これだけ読めばむしろ、「見事な最期」と感じてしまう。
(⇒ ロイター 2019年10月27日記事:ISのバグダディ指導者死亡、トランプ大統領発表 米軍急襲で自爆)
もちろんその爆発に子どもを巻き込んだというのはありそうなことだが、
しかしアクション映画の「いい人」脇役が同じことしたときのように、巻き添えナシで自爆するというのも現実世界ではなかなかできないことなのだろう。
イスラム国というのは、今からちょうど2年前に「首都」ラッカを陥落させられ、領域国家としては滅亡した扱いをされてきた。
もちろん日本においても、その名をニュースで聞くことは激減した。
今さらバグダディ殺害成功と言われても、そのニュースバリューは日本ではそんなに高くないかもしれない。
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さて、今回のようなニュースがあると、必ず間違いなく「彼が死んでもすぐ後継者が出てくるだけ」「こんなことをしても戦争とテロは終わらない」という意見がネットに溢れる。
それはそうだとしても、じゃあアメリカはどうすればよいのだろうか。
当然ながらアメリカには、その時その時のテロ指導者を殺していくしかないのである。
そしてアメリカは今のところ、その大物二人を殺害するのに成功していることになる。
言うまでもなく今回のバグダディ襲殺は、2011年5月2日のウサマ・ビン・ラディン襲殺に続く2回目だ。
この点、アメリカが「実績」を積んでいることは誰にも否定できない。
つまり現時点で一応は、「アメリカに狙われたら、有名テロ組織の大物首領は生き残れない」法則が成り立っている。
これはやはり、米軍の威信を高めるものだと言わなければならないだろう。
だからやはりたいていの人間は、テロ集団の首領であっても、米軍のターゲットにならないよう気を遣うようになる……
というのは、とてもありそうな話である。
言ってみれば「核の抑止力」はもう古く、現代は「特殊部隊の抑止力」こそ重要になっている、ということになろうか。
(実際、検証することはできないのだが、米軍の特殊部隊に狙われるのを恐れて行動を抑止しているテロ指導者は、いかにもいそうだ。)
そして、次にアメリカの特殊部隊が狙いそうなテロ指導者と言えば――
バグダディの後継者もそうなのだろうが、なんだか最近サウジの油田を攻撃したとされる、あのイエメンの「フーシ派」のそれのような気がするのである。