プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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北朝鮮の「特別重大発表」はICBM発射-アメリカの北朝鮮空爆はあるか?

 7月4日、北朝鮮は「午後3時30分に特別重大発表を行う」と事前発表してから、「ICBM大陸間弾道ミサイル)の発射実験に成功した」と伝えた。
 日本人にとっては、何とも新鮮味のない特別重大発表である。
 プロレス界ではネタとして「特別重大発表があります」と言っておいてからどうでもいい発表を行うことがちょくちょくあるが、それと同列と言っては言い過ぎか。
 北朝鮮の“飛翔体”発射はまるで日常茶飯事のごとくになっているので、またミサイルを発射したからって、もはや日本国民のほとんどは「はいはい、また発射」と不感症になるのも無理はない。
 なお、これに対してアメリカのトランプ大統領は、「この男(北朝鮮トップの金正恩)は他にやることがないのか」と早速ツイートしている。
 なかなか的を射たツイートではなかろうか。
(しかしトランプ大統領も、「CNN」の文字を顔にかぶせた男をボコボコにするコラ動画をツイッターに投稿したばかりなのだが……)
 
 ところで今回のミサイルが本当にICBMなのかは、アメリカ軍でも掴みかねているようだ。
(ミサイルは9時39分頃発射されたが、初期分析では中距離弾道ミサイルだと考えられていたらしい。)

 トランプ大統領は同ツイートで、
「韓国と日本はもはや我慢ならないだろう」
「おそらく(中国は)北朝鮮にもっと強い行動に出て、このくだらないことをきっぱりと終わらせるだろう」
 とも書き込んでいるのだが、別に日本は「もはや我慢できない」ことはない。
 冒頭に書いたように、日本人にとってこれは「よくあること」である。
 正直なところ日本人のかなり多数は、北朝鮮ってとっくにICBM(みたいなもの)を持っていると思っていたのではないだろうか。
 「え、今まで持ってなかったの?」と初めて知った人も多いのではないだろうか。

 しかし日本人にとってはベタな話題でも、もちろん北朝鮮自身にとってはわざわざ「特別重大発表」と銘打つほど重要なことだ。
 そしてアメリカにとっても、いよいよ「アラスカに届く」かもしれないミサイルを持った、と(自国の分析ではなく)相手方自身が宣言したのだから、やっぱり重大なことである。

 さて、別に北朝鮮の味方をするつもりもないのだが――
 どうして北朝鮮ICBMを持ってはいけないのだろう。
 核兵器も同じだが、なんで「今すでに持っている」国が持っているのは問題にされず、今から持とうとすれば非道徳的だと言わんばかりに叩かれるのだろう。
 はっきり言って、核兵器ICBMといった大量破壊兵器の所有というのは、「先行者利益」及び「既得権益」の行き着くところまで行ったものである。
 アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国という、国連常任理事国5大国。
 これ以外には核を持ってはならない、しかし5大国が持っているのは不問に付される――というのは、どう考えてもおかしなことだ。
 いや、5大国の政府・国民が「オレらは既得権益を守りたいんだ。オレらは特別なんだ、例外なんだ」とキッパリ言うなら話はわかるが、その他の国々の政府・国民さえもまるで「道徳的に許せない」といった感じで非難するのは理由不詳としか言いようがない。
(また、それなのに、核兵器を持っていると宣言しているインドとパキスタン、そして“核保有が公然の秘密”とされているイスラエルには、不思議と非難が集まらないのはなぜだろう?)

 もちろん日本にとっては、北朝鮮が核を持つのは不都合なので反対・非難するのが当たり前である。
 しかしそれはもっぱら都合上の理由によるのであって、道徳的に非難するのはバカげている。
 韓国が核を持つのも中国が空母を持つのも同様であって、別にどの国がどんな兵器を持とうと、それはその国の自由である。
(だから日本が核を持つのも、国民が良しとするならそれでいい。)

 とはいえアメリカにとって、「北朝鮮を潰すなら今」と考えるのはごく自然なことと思える。
 北朝鮮の核がアラスカに届いたとしても、たとえアラスカの都市が5つくらい消滅したとしても、むろん北朝鮮がアメリカに勝てるわけがない。
 そんなことをすれば北朝鮮が(人民全滅にはならなくても、少なくとも金王朝が)崩壊するのは確実である。
 それでも金正恩が「これ(核武装)しかやることがない」のは、それ以外の分野で国際的に勝てる見込みがないからである。
 また、「どうせ核を持ってりゃ武力攻撃されることはない」とタカをくくっているからでもあるだろう。

 しかしこれについては、世にも有名な前例がある。
 1981年6月7日、フセイン政権下で核開発を進めていたイラクオシラ原子力発電所を、イスラエル空爆により破壊した「バビロン作戦」である。
 当然のごとくイスラエル国連から非難決議を出されたのだが、しかし今となってはこれも歴史の1ページ。
 この事件があったからって、今に至るもイスラエルが非難されているわけではない。
イスラエルが批判されるのは、ほとんど専らパレスチナ問題に関してである。) 
 今から36年も前に前例があるのなら、2017年の今でも同じ“事件”が起こったとしてもそんなに驚くべきことではあるまい。
 
 アメリカが、それもトランプ大統領のアメリカが、北朝鮮の核施設を攻撃する可能性はけっこう高いのではあるまいか。
 いや、それによる北朝鮮の軍事的暴発を防ごうとするなら、いっそピョンヤンの官庁街を(原潜からのミサイル攻撃とかで)壊滅させ、金正恩を殺してしまった方が良いのではないか。
 もしそうなったら、北朝鮮って案外簡単に滅亡するような気がする。
 フセイン滅亡後のイラクと違い、今度こそ本当に人民が、解放軍として韓国軍・米軍を迎え入れるような気もする。
 
 言ってみれば北朝鮮は、「戦争をやたら仕掛けない」現代という時代に救われてきた体制である。
 要するに、ヌルい時代だからこそ、いつまでも崩壊しないで延命している国である。
 しかしそのヌルさも、永遠には続かないに違いない。
 もし北朝鮮が2050年くらいまで生き延びるとすれば、それこそ驚くべきことである。
 そして北の人民にとっては、何とも気の毒なことである……