6月12日、シンガポールでアメリカのトランプ大統領と北朝鮮の金正恩書記長が会談して共同宣言を出した。
アメリカと北朝鮮のトップが会談するのは史上初めてのことで、「歴史的会談」ともしきりに言われているが、私はこれ、別にたいしたニュースでもないと思う。
(そもそも北朝鮮と話し合いして何か実があることがあるのか、という素朴な疑問は別にして……)
その共同宣言というのも、大方の人の予想どおりそんなにたいしたことは書かれていない。
新日本プロレスのエース・棚橋弘至は、タメを作って話す割りにはたいしたこと言っていないとして芸人にネタにされているが、まさにアレを思い起こさせる。
しかしそれでももちろん日本の安倍首相は、この宣言を「支持する」し「高く評価する」。
アメリカの子分である日本の首相に、他に何が言えるだろうか。
「不十分」なんて口が裂けても言えるわけないのである。
そしてトランプは、北朝鮮の非核化費用(発射台の解体費とか?)は「韓国と日本が払うだろう。払わなければならないことがわかってるはずだ」と記者の質問に答えたという。
まあ、確かにそれはそうである。
なぜその費用をアメリカが払わねばならんのか、そんな筋合いはないのである。
しかしでは、なぜ日本と韓国がその費用を払わねばならんのか。
勝手に核兵器とその施設を作っておいて、その解体費用を隣国が払うことになるというのは、筋が通らないこと夥しい。
だがこれが、「民間では考えられない」国際政治の怪奇さというものなのだろう。
結局日本の立場というのは、「カネだけ出した」と世界から譏られた(という)30年くらい前の湾岸戦争の頃から、ちっとも変わっていないようだ。
たぶんこの理不尽も、平和を買うコストないしアメリカと同盟を組んでもらえる負担金のうちなのだろう。
そしてやっぱり、核兵器を開発するのは利益があることなのだろう。
もし北朝鮮が中東にある国なら、とてもこんなことはできなかったかもしれないが……
(すぐイスラエルあたりに空襲を喰らいそうだ。)
これも地政学を生かした世渡り術、というべきだろうか。
ただやっぱり北朝鮮は、自分で開発した核兵器を放棄するのに「それは当然自分のカネでやる」とは見られていない国なのである。
これが企業や個人なら愛想を尽かされているところだが、国となったらちょいと話が違う――
我々はこれを国際政治の複雑さと感じるより、むしろアホらしさと感じるべきなのかもしれない。