プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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金正男の暗殺? 唐突な“放蕩息子”の死-北朝鮮はいつになったら崩壊するのか

 金正男(キム・ジョンナム。45歳)が、マレーシアのクアラルンプールで「暗殺」されたらしい。

 彼は北朝鮮金王朝)の“前国王”金正日キム・ジョンイル。2011年12月死去)の息子であり、“現国王”金正恩キム・ジョンウン。33歳)の異母兄である。

 2月13日午前、クアラルンプール国際空港にいたところ、女性2人組が彼を毒針で刺したという。(「毒を盛られた」とする報道もある。)

 女性2人組はタクシーで逃亡したとの話もあり、彼女らは北朝鮮工作員の可能性もあるという。


 さて、金正男といえば、“デブの放蕩息子”というイメージが強いと思う。私もそれ以上のイメージも知識も持っていない。

(ちなみに私は「きん まさお」として彼のことを憶えていた。みなさんはどうですか?)

 そして必ずしも北朝鮮工作員が彼を殺ったとは断定できないが、しかし殺すなら北朝鮮くらいしかないだろうとも思う。(なにせ「あの」北朝鮮だ。)

 いったいこのタイミングで、なぜ彼が殺されなければならなかったのか――

 北朝鮮がやったとするなら、むろん金正恩の命令に決まっている。

 つまり王家の同族殺しで、いかにも末期王朝の風情である。

 しかし思えば北朝鮮って、崩壊する崩壊するとずっと言われていながら、いまだに崩壊していない。

 “初代国王”の金日成(キム・イルソン。1994年7月死去)が死んだときは今にも崩壊すると言われていたはずなのに、すでに王朝は三代目――

 今はもう、北朝鮮はもうすぐ崩壊するなどという記事も雰囲気もなくなっている。

 そういえば日本人拉致問題もすっかり話題のトレンドから外れ(ニュース化社会の不可避的宿命である)、つい先日も行われた日本海へのミサイル発射実験も、別に日本人の怒りや関心もたいして引き起こさなくなっている。すっかり「毎度」のことである。

 そう、我々はもう、北朝鮮に“飽きた”のかもしれない。

 “崩壊する崩壊する詐欺”は、もう聞き飽きたのかもしれない。


 私には、金正男を殺すことで金正恩の権力基盤が強化されるという理屈がどうもわからない。

 金正男なんて、そういう人(北朝鮮の王家にしては、なかなか面白い奴)がいるということは知っていても、我々にとっては別にどうでもいい存在になっていた。

 しかしやはり、身内の人間には違うのだろう。

 もしかしたら金正恩は我々の知らない/興味もないところで、王位を奪われる可能性に相当恐れをなしているのかもしれない。

 ということは、少なくとも金正恩の内面世界では、その権力が揺らぐ気配が北朝鮮内にあるということなのだろうか?

 しかしまさにそういう弾圧・粛正こそが、人間を謀反に駆り立てる最大の動機になることは事実である。

(「どうせ殺られるかもしれないなら、こっちから殺っておけ」という心理だ。)
 

 お隣の韓国では、朴正煕(パク・チョンヒ)大統領が1979年10月26日に暗殺されている。

 しかも殺ったのは、韓国中央情報局(KCIA)の長官その人だった。(自分の銃で射殺した。世界暗殺史上に残る珍しい事件である。)

 こういうことがあるのだから、北朝鮮でも側近中の側近なんかが金正恩を射殺することがあっておかしくはない。

 野次馬的な興味から言えば、金正恩にはこの調子の疑心暗鬼でどんどん親族・側近を粛正していってもらいたいものである。

 そうすればいつか誰かが先手を打って、金正恩を暗殺することもあるだろう。

 もしそれが起こらなければ、我々は真田幸村ばりに「北朝鮮に男はいないのか」と言うこともできるだろう。

 しかしそれにしても、失敗国家の王であること・王族であること・貴族であることは、精神的にかなりキツいものなのだろう。

 これに比べれば我々の生活は、ずいぶん気楽なものだという思いを禁じ得ない。