4月21日、北朝鮮は――
「我が国の核兵器が完全であることが証明されたので、もう核実験もICBMの試射もやらない。
核実験施設も役目を終えたので閉鎖する」
と発表した。
これまでの姿勢を180度転換したもので、やや唐突なニュースである。
もっとも、「核兵器を廃棄する」とは言っていないが……
素直に見れば、これは北朝鮮の屈服ないし敗北である。
もちろんこの発表が「口先だけ」「ちょっと何かあったらすぐ元に戻る」という可能性は十二分にあるのだが――
しかし、時は4月27日に金正恩と韓国の文在寅大統領が非武装地帯で会談し、
5月または6月に金正恩とアメリカのトランプ大統領が首脳会談をしようかという直前である。
北朝鮮が「こんな譲歩をしたんだから、何か見返りをくれよ」または「これでカンベンしてください」と言いたがっているように見えないとしたら、そちらの方が不思議である。
これから北朝鮮は、核開発でなく経済再建に集中・専念するつもりだと報じられている。
しかしむろん、北朝鮮にとって何が何でも守り抜かねばならない最優先事項は経済再建ではなく、金王朝の世襲支配を継続させるということである。
太平洋戦争末期の日本政府や軍部のように、「国体護持」が第一目標なのだ。
これは逆に見れば、国体護持さえ図られるなら、他にどんな譲歩だろうとやってしまう余地があるということだろう。
つまりトランプ大統領あたりは、軍事的に北朝鮮をいつでも叩き潰せる用意を見せておけば、北朝鮮をある程度言いなりにできる――
ということでさえ、あるかもしれない。
その意味で先日、シリアの化学兵器施設をミサイル攻撃したことは、やはり北朝鮮へのメッセージにはなっていたということだろうか。
いや、実は密かに北朝鮮へ「次はオマエら」と本当に伝えていたことだってあり得るかもしれない。
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ところで、別に北朝鮮を弁護するわけではないのだが――
小野寺防衛大臣は今回のニュースを受けて、「日本を射程内に収める中・短距離弾道ミサイルを放棄するとは言ってない」と不満を述べている。
しかし根本的な疑問なのだが、ある国が中・短距離弾道ミサイルを保有するのを、他国がどうして放棄しろと言えるのだろうか。
短距離弾道ミサイルが日本の脅威になるとすれば、中国が空母を保有することだって日本への脅威になる。
しかし実際に中国が空母を保有するようになった今、日本政府が「中国は空母を放棄すべきだ」と述べる気配はまるでない。
中国は保有して良くて(文句を付けないで)北朝鮮はダメ、というのは、どう見ても御都合主義である。
(ちなみに、韓国が弾道ミサイルを保有することになったら、日本政府はどう対応するのだろうか?)
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ともあれこれで、間近に迫ったトランプ・金正恩会談はグッと注目度が高まることになった。
トランプは、(今までのアメリカ大統領がそうだったように)やっぱり北朝鮮とは融和することになるのか――
アメリカ大統領が北朝鮮にミサイルを撃ち込むとすれば、トランプを措いて他にいないと思われるだけに、今後の米朝関係(と金王朝の存続)は当分の間この会談で決まってしまいそうである。