プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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不動産(国有地)売却の外道-購入代金「分割払い」の異例ぶり

 近畿財務局は、本件国有地の返還(国による、契約条件不履行(不成立)に基づく買い戻し)を求める通知を森友学園に送っている。

 時事通信3月10日付け記事によると――

 国有地の鑑定額9億5,600万円からゴミ撤去費用8億円強を差し引いた1億3,400万円が契約上の売却金額なのだが、

 森友学園はこれを分割払いすることになっており、まだ2,787万円しか支払っていなかった。

 契約書では、契約不履行の場合は(支払い済みの)売却額と同額で買い戻すことになっており、この2,787万円から売却額の1割に当たる違約金を差し引いた1,447万円が国の買い戻し金額になるそうである。


 いやはや、私はてっきり鑑定額の約9割引で森友学園が土地を買ったというならば、当然その売却代金1億3,400万円は一括払いしたものだと思っていた。

 しかしそれでさえ分割払いだったというのだから、これはさすがに優遇が過ぎるというものだ。

(そして“買い戻す”“返還を求める”ということは、売買代金の2割を支払っただけで所有権登記移転を行ったことになる。

 宅建業法では、宅建業者が一般人に土地家屋を売るときは、売買代金の3割が支払われていれば所有権登記しなければならないことになっている。それに比べても甘々である。)


 我々が居宅とその敷地を買うとき、むろん分割払いをする。(これを「住宅ローン」と呼んでいる。)

 しかし分割で払う相手は、売主ではない。それは銀行など金融機関に対してである。 

 我々は銀行からカネを借り、それを一括で売主に払う。分割で返済していくのは銀行に対してである。

 おそらく、というかまず間違いなく、財務局だって自分に対する一括払いを求めるのが当たり前であるはずだ。

 そのカネはどこかから借りてきなさいと言うのが普通で、そうでなければ「購入したい」と要望があっても門前払いしているはずだ。 

 それが(異例中の異例であるはずだが)、自らに対する分割払いを認めている――

 かつて神風特別攻撃隊は「統率の外道」と呼ばれたものだが、これは「国有地(いや、不動産一般)売却の外道」と呼んでもよいだろう。

 これはまた、森友学園の籠池理事長(とその妻)の国有地取得の「要望」が、いったいどれだけ強引で執拗なものだったかを窺わせるに充分だとも思える。
 

プロレス実況アナ「籠池理事長は国会で何を語るのか?」

 森友学園豊中市の国有地に4月開校を目指していた“瑞穂の國記念小學院”は、大阪府が不認可にした。

(そして、実際の入校予定者はたった5人だったようである――こんな騒動になってから入学辞退した人が多数に及ぶとしても、あんまりな人数だ。)

 3月16日には参議院予算委員会の調査団(団長は山本一太 氏)が問題の国有地を訪れ、そこで籠池理事長はまたも爆弾発言をした。

「我々がこの学園をつくり上げようとしたのは、みなさん方のご意思があってこそだと思う。

 しかもそのご意思の中には、誠に恐縮ですが安倍内閣総理大臣の寄付金が入っておりますことを伝達します」

とのことで、安倍首相夫人の昭恵氏が学園に講演に来たときに100万円を渡されたそうだ。

 ここに来て自民党は、とうとう籠池理事長の国会への証人喚問(証人には偽証罪の適用がある)に応じることになった。

 民進党との合意によれば、3月23日に衆参両院の予算委員会で籠池理事長が登場することになる。

 そして16日の午後、籠池理事長自身も「すべては国会でお話しすることにします」とこれに応じる意志を示した。


 しかしこれまでの経緯を見るに、籠池理事長という人も相当に朝令暮改の人である。

 小学校が不認可になったときは「裁判に訴える」と言っていたのに翌日(3月10日)には認可申請を取り下げることとし、

 国会への参考人招致にも「出る」と言ったほとんど直後に「やっぱり出ない方がいいと思う」と言ったり――

 よって今回も、3月23日が間近になれば「やっぱり国会には出ない」となっても全く不思議ではない。

 そして、もし今回ばかりは証人喚問に応じたとしても、またあの“独演会”が繰り広げられるような気もする。

 「●●(選手名)は何を語るのか!」とは、プロレス実況アナウンサーがしばしば口にするセリフである。

 よってここも一つ、「籠池理事長は、国会で何を語るのか!」とアオリ口調でどこかのアナに叫んでほしいものだ。


 ところで本件国有地事案、「安倍政権を何としても倒したい」人にとっては、まさに千載一遇のネタであるには違いない。

 籠池理事長の言うように安倍首相が――「私人」としての妻・昭恵氏でも、国民の意識の中では安倍首相自身と同じである――本当に100万円を(開校費用として)寄付したなら、ますます政権打倒の追い風になる。

 ただ思うに、安倍首相が森友学園にカネを寄付したからと言って、辞任にまで追い込むネタとしては(本当は)少し弱い。

 仮にユニセフがとんでもない違法行為をしていたとして、ユニセフに寄付した政治家は責任を問われるべきだろうか?

 例の「安倍首相頑張れ、安保法制国会通過よかったです」と園児に言わせていたのは確かにヒドいが、さすがにこんなこと安倍首相も知っていたわけではないだろう。

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 しかしそれでも、“悪のイメージ”というものは怖いもので――

 内閣総辞職とまでは行かずとも、安倍首相と自民党にとって(少なくとも数ヶ月くらいの間は)大幅なイメージダウンになるのは避けられない。

 そして籠池理事長のこれまでの言動から見ると、偽証罪もものかは国会において「あることないこと」喋り散らす光景は、かなり現実味があると感じる。

 何となくこのシチュエーションは、何が起こるかわからないプロレスの試合を感じさせるものがある。

 アントニオ猪木参議院議員馳浩衆議院議員は、もしかしたらプロレスラーとしての血が騒いでいるのかもしれない。

(そしてまた、「こんなことは何度もあった」と思っているのかもしれない。)

 
 それにしても哀れをとどめるのは、近畿財務局の売却担当者である。

 豊中市議の木村真 氏らは3月11日、近畿財務局の「氏名不詳」職員を「著しく低い価格と知りながら、学園に利益を図り、国に損害を与える目的で売り渡した」背任行為に当たるとして裁判所に告発する方針を発表している。(3月22日に告発予定)

 私は今のところ本件は、政治家の圧力があったと言うよりは「近畿財務局が、強引にゴリ押ししてくる客に対して“配慮”してしまった結果」との説を採るものであるが――

 そんな“配慮”をしたあげく、自分が告発されちゃうのである。

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 しかもこの氏名不詳氏を、森友学園が救援したり訴訟費用を出してあげたりする可能性は全くない。

 やっぱり配慮なんてするものではなく――

 もしも配慮を要求されたときには、

「じゃあアナタは、私が困った立場に追い込まれたら助けに来てくれるんですか? 来ないでしょ?

 何で私がアナタのために自己犠牲を払うんですか? 私は断じて他人の便宜のために自己犠牲は払いませんよ」

 と堂々と言うべきなのがよくわかる。

教育勅語が「イイ話」なのは当たり前-森友学園と保守主義のイメージ下落問題

 森友学園については連日連夜新しいネタが出てきて、それらを読んでるだけで一日が終わってしまいそうである。

 本日(3月9日)にはいよいよ大阪府教育庁の職員が“瑞穂の國記念小學院”へ調査に入り、籠池泰典理事長も大勢のマスコミに取り囲まれた姿が生中継された。

 ところが教育庁職員はたった30分で学校から出てきてしまい、籠池理事長からの聞き取りをはじめロクな調査もできなかったとのこと。

 それはなぜかと言えば、籠池理事長の妻(で塚本幼稚園の副園長)の籠池諄子という人が、「夫の制止も聞かず」職員を携帯電話で撮影し続けていたからだという。

 この記事を読む人ならば、この籠池理事長の妻というのが、夫をも凌ぐ「問題児」であることをネットやテレビで見聞きされているだろう。

 その奇天烈ぶりは(もちろん、報道を信じるならばだが)枚挙にいとまなく――

 しかも7年前には、自分の幼稚園の前を通りかかった小学3年生の男の子を「挨拶できんから」との理由でどつき、最高裁まで争った末に30万円の罰金刑を受けたそうである。

(そしてこのとき小学生の父親に抗議された籠池理事長も、「なんやとー。どついて何が悪いんじゃ。これが園の方針なんじゃ」と謝りもしなかったらしい。)


 何というか、似たもの夫婦というか、似合いのカップルと言うべきか――

 他にいろいろ報道されていることもひっくるめて、ほとんど狂人の域に達しているかのようだ。

 そして今回、初めて大々的にマスコミに取り囲まれた籠池理事長は、質問には全く答えることなく持論を展開した。

 朝日新聞テレビ朝日を非難し、教育勅語のどこが悪い、みなさんこそ偏向しているから日本はどんどん悪くなる、と主張した。

 そしてまるでこれに呼応するかのように、稲田朋美防衛大臣は国会で、

「日本が道義国家をめざすというその精神は今も取り戻すべきだと考えている」

教育勅語自体が全く誤っているというのは私は違うと思う」

 と発言している。


 誰でも感じるとおり、籠池理事長と稲田防衛大臣が言っていることは、ここ二十年くらい?日本の保守勢力・右翼勢力が言ってきたこと/書いてきたことと同じである。

 もう全く、そのまんまの反復でありコピーである。

 ついでなので書いておくが、私も教育勅語が全部間違っているとは思わない。確かに「いいこと」を書いている(部分もある)と思う。 

 しかしそれは、他のどんな人の言ったこと/書いたことについても言えることだ。

 『毛沢東語録』にも『わが闘争』にも「イイコト」は書いてあるだろうし、今の北朝鮮の学校だって「イイコト」を教えているに違いない。

 あのトランプ大統領でさえ、演説では「イイコト」を言っているのではないか?

 この世には「イイコト」や「イイ話」が溢れているのであり、どこを見ても何を見ても大抵はそういうものに行き当たる。

 きっとあなたや私にも、「イイ話」の一つや二つは簡単にひねり出せることだろう。

 現にネットには(芸能人とかの)イイ話が――「話題・共感・賞賛を呼んでいる」などとリード文のある記事が、ポンポンポンポン掲載されているではないか?

 別に教育勅語に「イイコト」が書いてあるからと言ってそれは当たり前のことで、感動・感心するような話ではない。


 そしていつも思うことだが、では実際に教育勅語で育てられた戦前世代の日本人というのは、本当に今の日本人より道徳的に優れていたのだろうか?

 そう信じている人がもしタイムスリップしたとしたら、たぶん感じるのは失望や絶望ではないかと思う。

 私は昔の世代が今の世代より高貴で道徳的だったなどとは少しも思わないし、今の世代より若い世代はさらに悪くなるだろうとも思わない。

 世界はどんどん悪くなっていく、それに比べて昔は良かった、などと思うのは、典型的な古代人・中世人の感性である。

 たとえば少年犯罪について、本当に教育勅語世代というのは今の若者よりマシだっただろうか?

 そして教育勅語で育った大人たちは、今のあなたが周りから受けているよりマシな応対をあなたにしてくれるものなのだろうか?

 どうも私にはそんな風には思えないし、たぶんあなたもそうは思いはしないだろう。


 また、もっと言うならば――

 あなたが尊皇心を持っているとして、もしタイムスリップして歴代天皇に会うことができたならば、やっぱり失望を感じるだろうと思う。

 そんなね、昔の天皇がね、あなたを見て「自分が口をきいてもいい人間」とみなすと思いますか?

 「下民」とみなして差別心を隠そうともしないのが自然だとは思いませんか?

 まさか“民はわが宝。二人の間に分け隔てはない”なんて言ってくれると思ってますか?

 かつて「期待される人間像」というのがあったが、どうせ昔の天皇も、現代の人間にとっての「期待される天皇像」を満たしてくれることはほぼあり得ない。

(またついでに言えば現天皇も、右翼やガチガチの保守主義者が期待するような思想・心情を持ってはいまい――

 現天皇はどちらかと言えば「左翼的」な考えを持っているのではないかとは、よく取り沙汰されていることである。)


 たとえ「イイ話」である教育勅語で教育を受けようと、ロクデナシはやっぱりロクデナシである。

教育勅語で教育しようとしている籠池夫妻がまさにそうである、とまでは、まだ言うまい。)

 そしてその割合は、おそらく戦後教育を受けた世代と同じか、あるいは高いくらいなのである。

 そういえば教育勅語があれば、軍人勅諭というのもあるのだが――

 あなたはそれを朗読していた旧日本軍に、本当に入隊・入営したいと思いますか?

 いくら旧日本軍を美化したいと思ったところで、そういう動機を持つくらいの人間であれば、旧軍でどんなイジメ(特に新兵イジメ)が行われていたか少しくらいは聞いたことがあるはずだ。

 忠君愛国を謳おうが軍人勅諭で教育しようが、旧日本軍が清く正しく健やかな軍隊であったわけではない。

 現代に生きるあなたが「ぜひ入りたい」と願うような軍隊であったわけではない。

 
 しかしまぁどうしてこうも、教育勅語愛国心が大事だと主張する人間は、こんなのばっか(に見える)のだろうか。

 真の愛国者保守主義者たちは、一連の騒ぎ(と、森友学園・理事長夫妻)に対して血涙を流して然るべきである。

 しょせん教育勅語なんかを大事だと主張する奴は、この程度の奴ばかり――

 多くの国民は、またしてもそんな感想を新たにすることになってしまった。

 雑誌で言えば『正論』や『致知』なんかの保守系誌は、イメージ的に大打撃・大迷惑を被っているはずである。

 右翼の街宣車というのは、こういう事態には出動しないものなのだろうか?