本件国有地激安払い下げ問題について、ザクザクといろんな動きが出てきている。
(1) 安倍首相夫人・昭恵氏は名誉校長を辞任
安倍首相によると、昭恵氏が学園に依頼された講演を行った際、事前の名誉校長就任の打診に対し断っていたにもかかわらず、名誉校長として紹介されたらしい。
その後も森友学園から「父兄の前で(昭恵氏が名誉校長であると)言っているのだから、引き受けてもらわないと困る」と言われた末、(やむなく)就任を受諾したという。
森友学園、とんでもない悪者である。
(2)「安倍晋三記念小学校」としての寄付集めについて首相から学園に抗議
これも学園から安倍首相の事務所に複数回の依頼があり、断っていたにもかかわらず「安倍晋三記念小学校」を作るとして寄付集めが行われたらしい。
このたび首相側から学園に強く抗議し、学園側は謝罪したとのこと。
森友学園は“瑞穂の國記念小學院”のHPに昭恵氏の名誉校長としての「あいさつ」を掲載していたが、2月23日までに削除した。
やはり森友学園、とんでもない悪者である。
(3) 豊中市も実質2,000万円で(すぐ隣の)国有地を取得していた。
私は本記事その1で、「本件報道で一番怒っているのは、豊中市ではないかと思われる」と書いた。
本件国有地のすぐ東隣の国有地(9,492㎡)は、約14億2,300万円で国から豊中市に売却されているのだが――
日本維新の会・木下智彦氏の国会質問によると、豊中市が用意したその購入代金の内訳は、
・公庫補助金7億1,000万円
・国からの補助金(住宅市街総合整備事業として)7億1,000万円
・国からの臨時交付金(地域活性化公共投資として)6億9,000万円
・豊中市の自己負担2,000万円
となるらしい。
つまり豊中市は、実質2,000万円で14億2,300万円の国有地を買えたことになるようだ。
(ただ、この補助金が一切返済の必要のないものなのかは、よくわからない。)
しかしこれ、それほどには国民の怒りを招かないのではないかと思う。
国という公共機関が国有地を、その所在する地方自治体という公共機関に安く売却するというのは、「それは別にいいんじゃないの」と思う人が多そうである。
(いやむしろ、「そうすべきだ」とか「無償でもいいだろう」と思う人すら多そうだ。)
また、確かに国としてはほとんど実質売却益を得ていないことになるにしても、財務局という機関としてはやっぱり14億2,300万円の収益である。
上記内訳のうち、住宅市街総合整備事業は国土交通省、地域活性化公共投資は総務省がカネの出し手だろう。
財務省の財務局にとっては、それは「他の会社」である。
国全体として広い視野で見ろとは言っても、基本的に売り手にとって、買い手が購入資金をどこからどうやって調達するかはどうでもいいことだ。(ヤクザマネーだとわかっていない限り……)
そしてやはり、森友学園のように売買代金の「額面金額自体をディスカウントしている」のとはワケが違うと言うべきだろう。
(4) 地下埋設物の撤去価格の見積もりは、国(大阪航空局)が直接行った。
2月23日の国会質疑では、森友学園の購入した国有地の下のゴミ撤去費用約8億円につき、(専門業者でなく)国の機関である大阪航空局が直接算定を行ったこと――
及び、こんな場合に国が算定を行った前例はないことが判明した。
(財務省の佐川宣寿理財局長が、そう答弁した。)
その理由として佐川局長は翌24日、「(新たにごみが確認された)2016年3月から今年4月の開校まで1年しかなく、国が全部撤去すると入札が必要になる。しかし森友学園は『待てない。撤去費用を控除した値段で買って、ゴミ撤去も学校建設も自力で一気にやりたい』という意向だった」と、森友学園の要望に沿ったものだと説明している。
つまり、国が森友学園の都合に合わせて動いた、ということである。
これは、100%財務局がケシカランと糾弾すべきでもないかもしれない。
財務局が(国が)ゴミ撤去をしてから国有地を売却しようとすれば、もちろんその撤去費用の予算がいる。
しかし2016年度予算にそんな費用は計上していなかったろうし、入札以前にまずその予算を補正計上しなければならない。
そしてそんな巨額(少なくとも億円単位にはなるだろう)な補正予算が認められるなど、あまり期待できないのではないだろうか。
(もし森友学園が「やっぱり買うのはやめました」と言えば、とんだ無駄金になる。)
となるとゴミ撤去作業は土地売却後に買い手(森友学園)にやらせることにし、撤去費用相当分を売却代金から差し引くというのは、予算なしで売却する唯一の方法と言ってよいだろう。
しかしそれでも撤去費用の見積もりは、専門業者数社に行わせるのが普通だと思える。
(見積もり合わせ、と呼ばれる。しかしこれほど大規模になりそうな工事となると、見積もりを作ってもらうだけでも支払いが必要になるだろう――すなわちここでも予算が必要になる。)
なお、共産党の宮本岳議員の独自調査によると、2015年9月4日午前10時から正午までの間――
近畿財務局の9階会議室で、森友学園の小学校建設工事を請け負った設計会社所長と建設会社所長が、近畿財務局の統括管理官、大阪航空局調査係と会合を持ち、地下埋設物の処理内容や費用について詰めた議論をし、業者側が高額な処理費用を提示するなどしていたらしい。(しんぶん赤旗2月25日記事)
おそらく「大阪航空局が独力で積算作業を行った」と言っても、全く独力ではあるまい。
専門外なのにそんな積算能力があるはずはないから、やはり何らかの(業者の)見積もりを参考にしたに違いない。
それが「森友学園の小学校建設工事を請け負った設計会社・建設会社」の提示した高額な見積もりだったとしても、別に驚くには当たらない。
こうして見ると、どうも財務局は森友学園に振り回され、ズルズルとその「要望」どおりに動かされているように見える。
たぶん近畿財務局と大阪航空局の中の人も、「なんだよコイツら」「こんなことしてちゃイカンのになぁ……」などとウンザリしながら一連の作業や会合を行っていたように思える。