「NASAが火星で生命の痕跡を発見?」というのは、割とよく見るニュースである。
それはまるで東スポの一面見出しのようにも思える――
NASA 火星で生命の痕跡を発見 ?
というような見出しを、脳内で思い浮かべずにいられない。
そしてまた一つ、そのような発見があったらしい。
この記事では、火星で大量のメタンガス放出があることを生命の痕跡だと(考えられると)している。
しかしやはり世の人々を納得させるには、やはり生きた生物かその死骸・化石が見つからなくてはいけないだろう。
もっとも私個人は、地球以外の宇宙に生命は存在すると思っている。
いくらなんでもこれだけ巨大な宇宙の中で(しかもこの宇宙だけでなく、無数個の他の宇宙があるとも言われる)、たった一つこの地球にだけ生命があるというのは、あんまり不自然すぎるからである。
だいたい地球上の生命は、地球誕生の46億年前から「たった」6億年後の40億年前には、すでに生じていたとするのが定説である。
これだけからしても、生命は割と簡単に生じるものだと思わざるを得ない。
きっと人類は、21世紀が終わるはるか前に人工生命を作り出しているだろう。
しかもなお、今回の発見が本当に火星に生命があったことを証明するものであるなら、なおさら生命は簡単に生じるものと言ってよい。
なんたってこの、全宇宙に比べればゴミクズみたいなこの太陽系の中だけで2つもの星に生命が宿ったというのは、尋常でない高確率である。
もちろん生命は地球と火星で独自に生じたのではなく「他の宇宙のどこかから来た」という説もあるのだが――彗星や隕石に乗ってきたという説――、それにしたって太陽系の中で2つもそれを受け入れる星があったというなら、全宇宙でどれほどの星が受け入れてきたかわからないくらいではないか。
しかしたぶん、たとえ火星で生きた生物が見つかったとしても――
それが昆虫やヒトデくらいのものであるなら、我々の生活も意識も(昔のSF小説が書いてきたような)巨大な衝撃には見舞われないだろう。
確かにネット上などでフィーバーは起こるだろうが、やっぱりそれは殺人事件や芸能ニュースなんかと同じく、すぐ忘れられて時代遅れになってしまうものである。
(これほどの「事件」を忘れるはずがない、なんて言う人は、現代のニュース化社会を知らない人のみだ。)
そして当たり前と言えば当たり前だが、火星にヒトデがいようがいまいが、我々の日々の生活にはほとんど関係ないことだ。
いささか残酷めいて言うならば、別に宇宙生物がいたからって、私やあなたの日々の仕事が変わることなんてないのである。
そしてそれは、知的生命体(宇宙人)がいたのがわかった時でさえ、同じことではないかと思う。
彼らが地球を侵略しに来るなら別として、単に交信できただけなら、大多数の人にとってやっぱりそれはただの「ニュース」と受け止められるだけだろう。
いやそれどころか、宇宙人の暮らしというものがわかってきたとしたら、地球人の大多数はむしろ「ガッカリ」するのではないかとも思う……
それはたぶん、地球人の歴史とそんなに変わらない歴史だろうからである。
仮に彼らがものすごく進歩しているにしても、それはただ単に地球人より早く発生したというだけの理由だからだろうからである。