5月18日、有名歌舞伎役者の市川猿之助(47歳)が、自宅で意識朦朧の状態で発見された。
その両親、歌舞伎役者の市川段四郎(76歳)と妻(75歳)は、死亡した状態で発見された。
両親は床に並んで外傷はなく、一枚の掛布団が掛けられていたという。
猿之助はクローゼットで首吊りを図ったと見られ、自筆の遺書らしきものもあったという。
両親を殺めてからなのか、それとも両親の自殺を見届けてから自ら自殺しようとしたのか、わからないが……
これは「心中」事件と言ってもいいのではないかと思う。
その原因は、直前に週刊誌で報じられた猿之助のセクハラ疑惑なのではないかとされる。
(⇒ 日刊ゲンダイDIGITAL 2023年5月18日記事:市川猿之助さん「自殺図ったか」報道で《今こそJKTの闇を暴く時。膿を出せ》の声が出るナゼ)
(⇒ NEWSポストセブン 2023年5月18日記事:【スクープ】市川猿之助が共演者やスタッフに“過剰な性的スキンシップ”のセクハラ・パワハラ「拒否した途端に外された」)
さて、これは誰もが思ったろうが――
まず、「歌舞伎役者が心中」である。
これはまるで、江戸時代のような話だ。
もっとも、江戸時代の心中とは、好き合った男女がやることだったのだが……
現代では圧倒的に「一家心中」が主流である。
原因も愛ではなく、生活苦などの心労の方が圧倒的に多い。
そして今回の原因は、「名誉」なのだろう。
いったい両親は、こんなことで人生が終わる――歌舞伎の名跡も終わる――なんて、どうして想像していたろうか。
次に思うのが、またしても「同性へのセクハラ」なのか、という感慨である。
言うまでもなく世間の直近の話題は、ジャニーズ事務所の故ジャニー喜多川の、同性少年への(半世紀以上にわたる)性加害についてだ。
そしてまた今度は、歌舞伎界での同性へのセクハラ報道。
上記引用記事では宝塚歌劇団も槍玉に上がっているが、これもまた女性という同性へのセクハラ・性加害の話だろう。
いったい「異性」ではなく「同性」への大規模な――制度的な、とも言えるだろうか――セクハラ・性加害が盛んだというのは、日本の芸能界やショービジネス界(歌舞伎界もその一種とされている)の特質なのだろうか。
ある意味日本は、同性愛に「寛容」なのだろうか。
それともやはり、芸能界は日本の中でも「特殊」なのか。
絶対的な力関係があるから何をされても逆らえない、だからセクハラ・性加害がはびこる、という仕組みはわかる。
しかしその対象が異性ではなく同性だ、ということについては、多くの人にとってはわからないことだと思われる。
これも一種の、「日本文化」なのだろうか。
そうだとすると、ジャニーズ事務所や宝塚歌劇団が解体されることはあっても、解体後に形成される群小事務所ではやはり同じような構造が「自然に」でき上がるのだろう。
そして歌舞伎界というのは、解体されることがない。
となるとやはり、今回のようなショッキングでスキャンダラス過ぎる事件でも起こらなければ、業界の体質は治らないのだろうか。
それにしても、江戸時代の心中は愛で、令和の今回の心中は名誉が原因だとしても――
結局人間の最後の最大の問題は「性」なのだと、思わないわけにはいかないだろう……