日本時間3月8日の朝、イギリスの公共放送局BBCは、『プレデター(捕食者):Jポップの秘密のスキャンダル』というタイトルのドキュメンタリー番組を放送した。
そこでは、元ジャニーズJrらが素顔で登場し、ジャニーズ事務所の総帥であった故ジャニー喜多川から自らが受けた性加害の有様について、赤裸々に告白したという。
(⇒ 日刊ゲンダイDIGITAL 2023年3月9日記事:英BBCが特集した“喜多川帝国”の性加害と暗部 ジャニーズと「共依存」の大手メディアはまたスルー?)
まず、今この時期に外国の有力メディアが、日本のジャニーズ事務所の暗部についてドキュメンタリーを作って放送する、というのが意外である。
私はてっきり、アメリカやイギリスの人たちは、日本のアイドルやJポップなんぞには何の興味もないものだと思っていた(笑)
そんなものを採り上げた番組を放送して――それもBBCはイギリス版NHKである――、視聴率が取れると判断するとは思わなかった。
そして、次に思うのが――
やっぱり日本はこういうことについて、外国からの刺激がなければ何も動かない・何も報じない国なのだという感慨である。
日本は外圧でしか動かない、と日本の内外からよく言われていることは、日本人の多くが知るところである。
これは白村江の戦いや黒船来航から現代に至るまで、日本の宿痾というか宿業というか、もうDNAみたいなものなのだろう。
故ジャニー喜多川が同性愛者かつ少年愛者であること、アイドル志願の少年たちを何人もつまみ食いしてきたことは、これまた日本人の常識に近いものがあった。
いや、それどころか、裁判で真実と認定されてさえもいた。
しかしそれでも、日本の大手メディアはこのことをほとんど(一切?)報じることがなかった。
報じたのは週刊文春をはじめ、あとはスポーツ新聞系のアングラメディア(と言っては言い過ぎかもしれないが)のみであった。
そしてやっぱり風穴を開けたのは、今回もまたBBCという外国メディアであった。
日本のメディアはまたも、自国の芸能事務所なんていうドメスティック極まりない分野において、外国メディアにドキュメンタリーを制作・放送されてしまうという恥を晒したのである。
いったいこんなことをなんで、日本ではなく外国のメディアが取材しインタビューを取り、制作・放送できてしまうのか(笑)
もっとも日本人にとって、自国のメディアが御用メディアであることもまた常識の一環ではあった。
それは日本のメディアが「国」の御用メディアだというのではなく、およそ「芸能事務所」全般について御用メディアだという意味である。
「国」に忖度するのではなく、「芸能事務所」とりわけジャニーズに忖度するメディアだという意味である。
そして私には、そうなってしまう理由がわかる気がする。
しょせんメディアも民間企業であり、芸能事務所は取引先の同業者だ。
官庁についてメディア自身がさんざん言っているように、「仲間を庇う、守る」意識が働かないわけがあるだろうか。
そしてまた、もし芸能事務所のスキャンダルを報じようものなら、アイドルの熱狂的なファンたちから洪水のようにクレームが寄せられることも明らかである。
いったい誰が、進んでそんな目に遭いたいと思うだろうか。
もしかしたら日本は、50年に1回くらい外国に占領された方がいいのかもしれない。
そうやってリフレッシュしないとダメな国なのかもしれない。
しかしそれは極端だというのなら、いっそ金融ビッグバンならぬ報道ビッグバンとして、外国のテレビ局も自由に日本の電波権を取得できるようにしたらどうか。
BBCやCNNが地上波放送を持てるよう、外国放送枠を作ってはどうか。
そうでもなけりゃ全然報道されないことが、この国にはまだまだたくさんあるのではないか……