野口悠紀雄 氏と言えば、日本悲観論者の巨頭である。
あるいは、警鐘乱打者の巨頭と言った方がよいか。
その野口氏の新著タイトルは、まさに面目躍如と言うべきか集大成と言うべきか、『日本が先進国から脱落する日』(プレジデント社)というものである。
(⇒ プレジデントオンライン 2022年11月17日記事:日本の歴史的転換点「先進国時代」の終わり アベノミクス以降「一人あたりGDP」は日本だけ落下の一途)
いまや日本人の賃金が30年間も上がることなく、経済規模ではとっくに中国に抜かれ、一人当たり経済力では韓国や台湾にも抜かれようとしているのは、日本人の常識である。
こうなったのはなぜなのか、誰のせいなのか何のせいなのか、犯人探しをしたくもなろうというものだ。
しかし私は以前の記事にも書いたが、別に日本が衰退するのも先進国クラブから脱落するのも、自然の流れだと思っている。
そうなったからと言って落ち込みもしなければ、卑下する気にもならないのだ。
なぜなら、こういうことは世界史の中で今まで何度でも腐るほどあったからだ。
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我々は、モンゴルが人類史上最大の帝国を築いたことを知っている。
スペインやポルトガルが、世界の主役だった時代を知っている。
しかしこれらの国の中で、今後の世界で再び超大国になる可能性があるのはトルコぐらいのものだろう。
つまり、昔から誰もが常識として知っているように――
栄枯盛衰と盛者必滅は世の習い、
国や民族が隆盛して没落するのは当たり前のサイクルであり、
振り返ってみれば、世界史上の一発屋だった国や民族は数知れない。
この日本もまたその一つであるというだけで、不思議なことは何もない。
そもそもあなたも、思ったことがあるはずだ。
日本は明治維新以来、奇跡的なくらい調子が良かったと。
こんな調子のよいことが、いつまでも続くわけはないと。
明治維新からわずか20年30年程度で清(中国)に勝ち、ロシアに勝ち、ついには世界五大国の一角に食い込んだ。
さすがにアメリカには負けてミソをつけたが、しかしたちまち復興して世界第二の経済大国にまで成り上がった。
しかしこんなことが、いつまでも続くわけないのである。
こんなツキに、いつまでも恵まれるわけはないのである。
日本の旭日昇天の時代は終わり、まるでアイドルが普通の女の子に戻りますと言うかのごとく、普通の国に戻っていく。
もちろんいずれはアメリカも中国も(中国共産党王朝も)、衰退するか滅びる日が来る。
かつて世界最高の文明を誇ったシュメール人が消え去り忘れ去られたように、そんなことは世界史の常道なのだ。
そして別に、今のスペイン人やポルトガル人が絶望に打ちのめされて生きているわけではないように――
先進国から脱落した後の日本人も、それはそれなりに生きていけはするのである。
いずれ日本人は、フィリピン人のケツを舐めて生きていくのかもしれない。
しかし今だって、アメリカ人のケツを舐めて生きているのだと言えないこともない。
少なくとも、本当に日本が先進国クラブから脱落したとしても、日本人は絶望するには及ばないとは言えるだろう――
そして確かにあなただって絶望に打ちのめされて生きるのではなく、スマホゲームでもやって普通に生きていくのではないだろうか。