プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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盆踊り文化の絶滅と海外伝播-日本人はもう踊りたくない?

 日本の夏の象徴、盆踊り。
 
 それが消滅の危機に瀕しているという。

 なんでも、FNNが15歳~29歳を対象に行ったネットアンケートでは、約6割が盆踊りをしたことがないとのこと。

 全国では次々と盆踊り行事が廃止されており、その理由は「近隣クレームの増加」。

 例によって、盆踊りの音楽や太鼓の音にクレームが付けられているらしい。

(⇒ FNNプライムオンライン 2022年8月15日記事:若者の半数超「盆踊り経験ない」 近隣クレームで廃止の動きも)

 保育園の建設・存在とかでもそうなのだが、ここでもまたしてもクレームが原因になっている。

 このクレームというもののせいで、社会がどんどん悪くなっている――

 と、怒る人も多いだろう。

 だが、盆踊りの消滅危機というのには、クレーム以外にも原因があると思われる。

 一つは誰でも考え付くように、地方での人口減少と(それに反比例するかのような)単身世帯の増加である。

 盆踊りは、単身世帯の単身者が行くようなものではない。

 それは多くの場合、子連れの家族が行くものである。

 もはや日本はそういう世帯形態が一般的ではなくなったので、これだけでも盆踊りの存続にとって大ダメージだろう。

 また、ほとんどの盆踊りを主宰しているだろう「地元の町内会・自治会」というものを、特に外来の単身世帯は極度に入りたがらない――忌み嫌っている――というのも理由のうちだ。


 そして、もう一つの理由は――

 もう日本人のほとんどは、「みんなと一緒に踊る」なんてことをしたくない、ということだと思われる。

 一言で言って今の日本人は、一人で楽しみたいのである。

 そうでなければ、限られた知り合いの中だけで楽しみたいのである。

 これはもう、現代日本人の国民性・民族性と言ってもいいだろう。

 つまり、たとえ「騒音」クレームがなくても、盆踊りは衰退していく運命ということになる。


 一方、そうであるなら、盆踊りの活路はむしろ海外にあるだろう。

 「マレーシアでの盆踊り」はこのたびイスラム教側からクレームがついたことで有名になったが、今年(2022年7月16日)には、5万人を集めた大盛況となっている。

 これはたぶん、皆さんも思っていることだろうが……

 どうも日本以外の海外の人は、「大勢で集まって踊る」ことが好きなのだろう。

 いや、それが嫌いだ、そんなことはしたくないという現代日本人の方が、世界基準では異常なのだろう。

 
 「昔の中国の文化が中国ではとっくに滅び、むしろそれが伝播した日本の方で今も受け継がれている」

 と言われる文化は、多々ある。

 それが今度は、日本では絶滅する盆踊りがマレーシアで(活力を持って)受け継がれる、ということになるのだと思われる。

 これは日本にとって惜しむべきこと、あってほしくないことと思われるかもしれないが……

 しかし考えてみると、江戸時代から昭和初期までやっていた祭りで、今は全然忘れ去られている祭りなんて、星の数ほどあるはずである。

 そして我々はそのことを、特に残念無念にも思っていない。

 となると盆踊りというのも、21世紀前半にはほぼ消滅した時代風俗として、「そんな文化もありました」となるのではないだろうか。

 同時に、数少ない「日本からの文化輸出」として、有名になっているのではないだろうか。