最近ネットで流行るもの――
それは
「今の日本がいかに世界に負けているか、
安い国であるか、
衰退するばかりの国であるか」
という日本ダメ論である。
(⇒ 幻冬舎ゴールドオンライン 2021年10月21日記事:日本の1人あたりGDPは「世界23位」…低賃金と非正規化の実態)
ちょっと前は「日本スゴイ」の論や番組が流行っていたのだが、それはどうやら廃れたようだ。
さて、ここで近頃の私が感じるのは――
日本人の中のかなり多くの人々は、
こうした日々数々の日本ダメ論・日本衰退論を目にして、憤ったり矢も盾もいられなくなったり、まるで幕末の志士みたいな気持ちになるのではなくて、
むしろ「日本の衰退・転落・果ては滅亡を、実は望んでいるのではないか」ということである。
いや、もっと正確に言うと、日本衰退論を「心の支え」にしてるのではないか、ということである。
これは、あまりに突飛な感覚だろうか。
そんなわけないだろう、と一刀両断にすべきものだろうか。
日本人は、真面目で勤勉だと言われる。
それでいながら世界で屈指の「仕事をイヤイヤしている」国民だと言われる。
また、市民革命や暴動を起こさないことでも有名である。
そしてまた、40代や50代になっても低年収で不安定な人間が数多くいて、
少なくとも男性は世界でも最も孤独な人間たちとされ、
将来に希望も持てずに低賃金労働・非正規労働を繰り返している人間が(老いも若きも)ウヨウヨいる――
というのも、たぶん事実なのだと思われる。
さて、そういう人間が自殺に向かわないとすれば、
「いっそこんな世界は終わってしまえばいい」
「みんな(自分と一緒に)没落すればいい、没落すべきだ」
という心境になると考えるのは、それほど的外れなことだろうか。
それはむしろ、日本人的には自然な心の成り行きとは言えまいか。
日本人の給料は30年以上も上がっていない、
日本人の格差はどんどん広がる一方である、
もちろん人口も減少する、
全体として日本は世界の中で没落し、
(嫌いなはずの)韓国にも抜かれ、
もしかして未来は中国の属国・支配下になるかもしれない……
そんなことが日本人の「心の支え」になるなどとは、ありえないことと思えるかもしれない。
しかし、今のこの国において自分には将来に希望がない、明るい未来が見えない、というのなら――
その果てにあるのが「自分と一緒にみんな没落すればいい。それこそが自分の希望」ということになるのは、ある意味非常に日本人らしい「まっとうな」心情であるように思える。
そしてそういう日本人が本当に数多くいて、格差の拡大と共に増え続けていくのなら……
日本の滅亡は、まことに日本人らしい日本独自の形でやってくることもあり得るだろう。