欧州圏(ユーロ圏)の経済的苦境が報じられている。
ユーロ圏のGDPは2023年で約15兆700億ドル、アメリカの約26兆8600億ドルの半分くらいらしい。
2008年の段階ではユーロ圏14兆2200億ドル、アメリカは14兆7700億ドルでほぼ拮抗していたのに、
以後の経済成長率はユーロ圏6%に対し、アメリカは驚異の82%。
これはもう、目を疑うような超絶格差ではないか。
(⇒ 中央日報 2023年7月19日記事:「フランス人、ワイン消費減らす」…貧しくなった欧州、GDPも米国の半分)
さてここで思い起こされるのは、例の「アメリカの時代の終わり」論である。
アメリカの世界覇権が揺らぐ、アメリカ一強の時代は終わる、世界は多元化する――
そういう論は、最低でも冷戦終結後の90年代からずっと言われ続けてきた。
いや、猫も杓子もそんなことを言っていた。
それが常識であり良識であり、そう考えない人は知性のない不道徳な人、みたいな雰囲気さえあったのではないか。
ところがどっこい、今の現実はこの有様である。
2008年はユーロ圏全体とアメリカ一国の経済規模は拮抗していたが、今はアメリカ一国でユーロ圏全体の倍なのである。
これはこの間、イギリスがユーロ圏を離脱したことくらいで説明が付けられるものではない。
あの「世界の知性」たちがこぞって言っていた「アメリカの時代の終わり」は、ありゃ寝言だったのか。
どんなに好意的に解釈しても、大外れとしか言いようがないのではないか。
そりゃ確かに、いつかアメリカの時代の終わりは来る。
どんな超大国も、いつか滅亡・没落するときがくる。
これは当然のことであって、そうなったからと言って予言が当たったなどと言えるものではない。
しかし90年代以後の「アメリカの時代の終わり論者」たちの話ぶりでは、2023年にもなればとっくにアメリカの時代は終わっていたはずではなかったか。
そして(中国はともかくとして)ユーロ圏・欧州というのはその多元主義の雄として、アメリカに堂々・対等以上に渡り合うことが想定されていたのではなかったか。
世界の知性が託宣していた「アメリカの時代の終わり」予想は完全に外れ、逆に日本や欧州は惨めなまでに差を付けられて没落した。
それが残酷な?事実であった――と、2023年の時点では言うしかないのではないか。
世界はかつてよりさらにクッキリと、アメリカ一人勝ちの様相である。
アメリカで銃乱射事件が頻発し、社会の分断ぶりがこれでもかと伝えられる中にあって、なおそうである。
いったいアメリカの時代の終わりっていつ来るのか、本当に来るのか。
そんなことを言うのは「何となくそう言ってみた(くなる)だけ」じゃないのか、と疑ってしまうのは私だけだろうか……