8月18日、アメリカのトランプ大統領は「デンマーク領グリーンランドの買収に関心がある。政権内でも協議した」ことを認めた。
(もっとも、「これは最優先事項ではない」とも言っている。)
これに対してデンマーク側は、もちろん売却する気はないと一蹴した。
するとトランプ大統領は、「バカげているなんて言い方は失礼だ」と、予定されていたデンマーク訪問を中止すると決めた。
私はこの一報を聞いたとき「さすが不動産王と呼ばれる大金持ちのトランプ、自分個人でグリーンランドを買うつもりなのか」と反射的に思ったのだが――
それは誤解で、どうやら個人資産から払うのではなく、アメリカ国家として購入するつもりらしい。
しかし「ブッ飛び大統領」と呼ばれる(呼ばれてない?)トランプ氏の発言の中でも、これはトップレベルにブッ飛んだ発言である。
かつて帝政ロシアはアメリカにアラスカを売り、さらにその前は、フランスがアメリカにルイジアナを売った。
それがいずれも破格の安値であったことは、とても有名な話である。
しかしそんな大昔はいざ知らず、この現代で、一国が他国の領土を――それも「世界最大の島」を――公然と買おうと言うなんて、これぞまさしくよく言われる「アメリカの傲慢」の最高傑作例とされるのではあるまいか。
トランプ氏は「これは大規模な不動産取引と変わらない」とし、さらには
「グリーンランドはデンマークに非常に大きな損害をもたらしている。
保有しているだけで年間約7億ドル(740億円)の損失だ。
(略)そして戦略的に、それは米国にとって良いことだ」
とさえ言ったという。
(⇒ AFPニュース 2019年8月20日記事:トランプ大統領、グリーンランド買収構想認める)
「日本の過疎の離島は、日本政府と日本国民に非常に大きな損害をもたらしている。
保有しているだけで無駄なインフラ維持費や補助金が垂れ流されている。
そして戦略的に、それは米国にとって(買収理由が立つという観点から)良いことだ」
とでもなるのだろうが――
もちろんこんなことを言われれば、日本人だって怒り呆れることだろう。
しかしそれはそれとして、もし本当にグリーンランドを買うとすれば、いったいいくらになるのだろうか?
何でもワシントンポストの分析によれば、それは2億ドルから1兆7000億ドルの間らしい。
1ドル110円として、およそ220億円から187兆円――
こんなに幅があって「分析」と呼べるのかは疑問だが、しかし220億円は安すぎる、とは誰でも思うことだろう。
何でも2016年のグリーンランド単体のGDPは、約26億ドル(2860億円)だそうだ。
(⇒ビジネスインサイダー 2019年8月20日記事:グリーンランドを買いたいトランプ大統領……だが「売り出し中」ではないし、そうだとしても高額に
何にせよ、アメリカがグリーンランドを買収できる可能性は、即ちデンマークがそれに応じる可能性は、全くないと言ってよかろう。
どうやら今回の買収話は、トランプ大統領のブッ飛び度がまたも限界突破した、ということを如実に示す一例となりそうである。
いったいトランプ大統領、どこまでイッちゃうのであろうか……