つい先日の3月1日、ウクライナのゼレンスキー大統領との公開面談で「決裂」した米トランプ大統領――
しかしそれに続く3月7日、彼は今度はウクライナの戦争相手であるロシアに対し、大規模な銀行制裁・経済制裁・関税を強く検討しているとSNSに投稿した。
また同時に、アメリカは(同盟国にも等しい)イスラエルの「頭越し」にイスラエルの敵であるイスラム主義組織ハマスと人質解放に向けての話し合いを始めたとも報道された。
またまたグリーンランドの「購入」、パナマ運河の「奪還」、カナダを始め世界各国に対する関税引き上げ意向表明など……
まるでトランプ大統領は全世界に対して「全方位攻撃」をかけているかのような様相を呈している。
しかもそれは、同盟国であり友好国であるとされてきた国に対してもである。
いったいトランプは何がしたいのか何を考えているのか、やることなすことメチャクチャな暴走ではないか――
と、世界中の多くの人々が考えるのも無理はない。
しかしこれ、見方によっては、トランプの正真正銘の「党派性のなさ」を強烈に表現しているとも言えるのではないか。
もともと彼個人が、アメリカの不動産王というビジネス覇者の一人なのを知らぬ者はない。
そのトランプ流ビジネス感覚においては、自社(つまり自国アメリカ)と他社(他国)の間に同盟も友好もなく――と言ってはさすがに言い過ぎかもしれないが――、あるのは利害関係の対立と共有だけ、
と考えていることは大いにありそうである。
アメリカに利益となればあるときは他国を叩いて脅し上げ、またあるときは合従連衡を組み、しかもそれがビジネス道徳に叶った「正義」であり「当たり前のこと」と彼自身が思っているというのは、実にありそうなことである。
そういう意味で、トランプには本当に党派性がないと信じて良いのかもしれない。
特に、ともすればむしろアメリカの方が「言いなり」になってきたとさえ言われるイスラエルに対しても「配慮しない」態度に出た、というのが本当であれば、ますますその党派性のなさは本物的だろう。
そして、真に興味深いのは――
この党派性のなさ・利益次第でどこの国でも叩いたり手を組んだりするという「節操のなさ」が、逆に世界に効率的な平和をもたらすかもしれないという推測だ。
これほどどこの国に対しても全方位的攻撃をかけるようなのであれば、確かにトランプ・アメリカは「どこの国にも肩入れしない」と世界中に信じてもらえるかもしれない。
これは確かに、和平仲介役としては望ましい中立ぶりであり「信望」の一種である。
そして可能性としては、もしかしたらトランプ大統領はそういう役割を狙って――自分の名誉だけでなく、真に世界に平和をもたらすことを狙って――、あえて今のような全方位攻撃の態度を取っているという「遠大なプラン」さえも想定できる。
そう、トランプはひょっとして、本当に世界に平和をもたらすのかもしれない。
ただしおそらくその平和とは、日本が北朝鮮にミサイル攻撃されたとしても、中国が南西諸島を奪いに来ても、ロシアが北海道へ侵攻しても、
アメリカはある程度適当に戦った上で日本へ「ディール」するよう持ちかけ、ある程度の領土割譲や譲歩をするよう勧める、
それを日本が断るなら後は知らんと突き放す、
あるいはアメリカの支援の見返りに何かアメリカへ譲歩・譲渡すべきだ、
という形で守られる平和ということになるのだろう。
それでも多くの日本人は、平和でありさえすればそれでもいいや、沖縄周辺や北海道を失ってもしょうがないや、と考えるように思われる。
しかし世界の他の国々や勢力は、みんながみんなそう考えるわけではないだろう……