プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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戦争遺品売買と艦船美少女化の差-どっちがいっそう不謹慎?

 今、太平洋戦争中の旧日本軍の軍装品などが、盛んにネット取引されていると報じられている。

headlines.yahoo.co.jp


 しかしもちろん、こんなこと「とっくに知ってた」人が多いだろう。

 こういうの(を集めるの)が好きな人は、壺や香炉が好きな人と同じく、世にたくさんいるのである。

 ネットがなければ通信販売で、専門店に足を運んで、もしくは同好の士のハガキのやりとりで今までも入手してきたのである。

 そりゃ遺族と言っても、お爺さんやひいお爺さんの遺品と言っても、現世代にとってはただのモノには違いない。

 自分自身や直接の親のモノじゃないのなら、思い入れなどあるわけないのだから、汚れた軍服なんて捨てるのが当然である。

(加えて、これだけ「実家じまい」や「断捨離」が普及しているのだ。)


 ましてそんなものを売ればなにがしかのカネになるとわかれば、そりゃ売るだろう。

 売らないのは売り方を知らない人だけ――と言っても過言ではないのだろう。


 ちなみに上記引用記事に限らないが、最近チラホラ「中国では意外と旧日本軍関連が人気」というネット記事が出ている。

 これは面白いことで、ついに中国も「もはや(対日)戦後ではない」時代に入ってきたのかもしれない。

 中国がモンゴル人に、満州族に、さらに遡れば匈奴突厥に侵略・征服されてから何百年も経つが――

 今の中国人がそんな民族のコスプレをしたって、別にどうということもない。

 中国に侵入した最後の異民族たる日本人の軍勢の軍装を集めたってコスプレしたって、何の不思議があるだろう。


 ちなみに言うと、日本において旧日本軍の軍装よりはるかに人気があるのは、言うまでもなくナチス・ドイツ軍の軍装である。

 とにかく旧ドイツ軍の軍装や兵器が絶大な人気を誇っているのは、多くの男性には周知のことのはずである。

tairanaritoshi-2.hatenablog.com


 もし完全可動の本物のティーゲル戦車なんかを入手できるなら、きっとスゴイ高値で落札される。

 または、クラウドファンディングが成立する。

 SS(武装親衛隊)の本物の制服が出品されれば、猛烈に物欲を掻き立てられる人がいるのは当たり前である。

 しかしまた、そういう人が特に不謹慎な危険人物かと言えば、(たぶん)そうでもないのだろう。

 そういう世界は日本に何十年も昔からあり、しかもけっこう公然とあったのだが、あまり新聞で見たことがないのは不思議なことだ……


 ところで、もし先の大戦での軍装品などを遺族が売ったりネットで買ったりするのが、いささかでも不謹慎であるとするなら――

 例の「旧日本海軍の艦船を美少女化する」というのは、不謹慎ではないのだろうか。

 これこそ不思議なのだが、旧日本海軍の艦船に乗り組んでいて今も生存している元兵士の人たちは、そのフネが美少女化されるなんて冒涜だと思う人はいないのだろうか。

 そういうものが今の世の中に氾濫していることを、もしかして全然知らないのだろうか。

(どうも、さすがにそうとは思えないのだが……)


 いや、たとえ元兵士たちが思わなくても、これこそ世の新聞社が記事にしそうなことである。

 「美少女化する旧海軍の軍艦――戦争は遠く、娯楽化して」

 とかいうタイトルで。

(たぶん1980年代あたりの朝日新聞なら、きっとそういう記事を載せていたと思う。)


 しかし実際には、艦船や兵器の擬人化・美少女化を不謹慎と叩く(匂わせる)新聞記事はおろか、ネット記事さえほぼ見かけない。

 戦争遺品の売買に「違和感」を持つ人が多いなら、こっちの方がはるかに違和感を抱きそうなものなのに――

 もしかしたら新聞界もネット界も、こういうのをいささかでも叩くことはタブーになっているのだろうか。

 そんなことをすればネットで一斉攻撃を受ける、と思っているのだろうか。


 たとえば戦艦大和の生き残りの(90代くらいの)方々に、美少女化した「大和」を見せたら、それぞれどんな反応を見せるか――

 これも不謹慎なことかもしれないが、ぜひ実験してみてほしいものである。