プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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大林組・リニア建設談合不正受注事件-日本の大手企業には「談合担当者」がいるという事実…

 12月8日、9兆円事業とも言われるリニア中央新幹線の工事受注について、ゼネコン大手の大林組東京地検特捜部から捜索を受けた。

 また、同じくゼネコン大手の鹿島建設もその社員が任意聴取を受けているという。

 「談合」によって工事を不正に(ガチンコの価格競争をせず)受注した疑いだが――

 ゼネコン業界全体がつるんでいるというわけではなく、大林組が単独で他社に受注調整を持ちかけた疑いらしい。

(しかし結局、他社はその調整に応じたということだと思うが……)

 

www.bloomberg.co.jp

 

www.chunichi.co.jp


 正直、こんなニュースを聞いて激震が走る思いをする人は稀だろう。

 だって談合事件なんて、ほとんど日常茶飯事のように報じられているからである。

 平均的な日本人は、“談合”とはもちろん悪いことだとは思っているが――

 それでいながら「当然、行われているもの」だと「常識的に」感じているはずである。

 大林組鹿島建設その他のゼネコンが談合(「調整」)を行なっていたと聞いたからって、それを「とんでもないことだ」と憤る人は、むしろ世間知らずのウブな書生だと思われるだろう。

 普通の人は「ああ、そりゃやってるよね。でもバレちゃったのは運が悪いよね」くらいにしか思わないものだ。

(そしてまた、「ウチの会社も談合やってるんだろうなぁ」と思う人だって全然珍しくないだろう……)


 そう、ほとんどあらゆる業界で「談合が行なわれている」というのは、「日本人の常識」である。

 ゼネコン大手なんて今まで何度談合を繰り返し摘発されてきたかわからないが、それでも市場や発注者の信頼を失って倒産することはない。

 “ほとぼりが冷めれば”また普通に仕事を続け、また談合をやるのが世の常態である。

 つまり、日本人は談合に寛容なのだ。「当然あるもの」だと思っているのだ。 

 おそらく多くの社会人は、


「あのね、確かに談合は悪いこととされてるよ。法律で禁じられてるよ。

 でもそれはタテマエなんだ。

 世の中、そんなもんじゃないんだよ」


 と、優しく諭したいくらいだろう。

 
 だが、それも無理はない。

 繰り返しになるが、談合するのは別にゼネコンに限った話ではなく、他の業界でも普通のことである。

 しかもそれをやっているのは、日本の名だたる/錚々たる大企業の面々なのだ。


【2017年 全国自治体の消防救急無線デジタル化に係る談合事件】

 ・富士通ゼネラル

 ・NEC

 ・沖電気工業

 ・日本無線

 ・日立国際電気

(⇒ 産経ニュース 2017年2月2日記事:消防無線談合で富士通ゼネラル、NECなどに課徴金63億円命令 公取委)

 


【2016年 防衛装備庁の戦闘服など防衛装備品に係る談合事件】

 ・クラレ

 ・ユニチカ

(⇒ 毎日新聞 2016年3月1日記事:防衛装備品 繊維2社、20年以上談合継続か)

 
【2012年 陸上自衛隊の次期多用途ヘリコプター開発に係る官製談合事件】

 ・川崎重工

 ・三菱重工


(⇒ しんぶん赤旗 2012年9月18日記事:ヘリ談合 本紙入手資料で鮮明に 防衛省と川重・三菱 密談 癒着どこまで)

 

 
 これはつまり、NECだの富士通系だの川崎重工三菱重工など誰でも知ってる有名大企業には――

 「談合担当者」「談合担当課長」がいる、ということを示している。

(そしてたぶん、今でもいる。)


 やれやれと思わざるを得ないのだが、これは日本の大企業に入社したら――

 いずれ談合担当にさせられる可能性がある、ということに他ならない。

 
 哀れ彼、(こういうのに女性が選ばれることはあまりない気がする……)

 個人としては好人物で、家庭では良き夫・良き父であるかもしれないのに、職命により違法行為を担当させられることになるのである。

 そして他社の同類の人たちと会合を持ち、秘密の違法行為を話し合うわけである。

 これを、陰惨な悲劇と言わずして何と言おう。


 しかし、誰かにとっての不幸は誰かにとってのチャンスとも言う。

 今までもこれからも決して談合に加わらないような企業は、自社のサイトに――

 「我々は決して談合しません、させません!」と大書したバナーでも置いておけばよい。

 そしてその下に、「今まで起こった談合事件、その談合で罰を喰らった企業のリスト」をリンクさせておけばよい。

 こうすれば、新入社員をはじめとする人材集めにいささか有利になるのではないか?


 こうしたリストを自社サイトに載せるのは、確かに同業他社に対する挑戦である。

 業界で村八分や目の敵にされてもおかしくない。

 しかしあくまでガチンコの入札勝負をする気概と自信があるのなら、別にこういうのは違法行為ではないはずである。

 長い目で見れば、「それを承知で」入社してくるような人材を、自社に集めることができる。

 「違法行為をしなくていい」ホワイト企業として、学生や転職志望者を惹きつけることができる。


 “談合は世の習い”と言わんばかりの日本人の意識を変えるには、それくらいの会社が出てきても良さそうなものである。