プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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39年ぶり自衛隊銃乱射事件、教官狙いのフルメタル・ジャケット

 6月14日午前9時ごろ、岐阜市陸上自衛隊日野基本射撃場で――

 実弾訓練中の自衛官候補生18歳男性が、自動小銃を乱射して52歳と25歳の男性隊員2人が死亡した。

 候補生18歳は今年4月に入隊したばかりで、教官を殺そうと思って射撃したと供述しているという。


 自衛官が実弾訓練中に銃乱射して同僚らを殺害した事件というのは、1984年2月に陸上自衛隊山口駐屯地の射撃場で21歳男性自衛官が起こしている。(このときは1人死亡、3人重軽傷)

 それから実に39年ぶりに、全く同じような事件が発生することになった。

 およそ映画を見ているなら、こんなニュースを聞けば『フルメタル・ジャケット』を思い起こさずにいられない。 

 厳しい訓練とイビリで精神に変調をきたした「微笑みデブ」の兵士が、ついに鬼教官を撃ち殺す。

 これは映画好きなら知らぬ者のないほど有名なエピソードである。

 そして映画の中だけでなく、実際に戦場では「後ろから上官が部下の兵士に撃ち殺される」というのが、よく発生していたらしい。

 もっともこれは、まことしやかな都市伝説の一つかもしれず――

 本当にそんなことが戦争では頻発するものかどうか、私には知るすべがない。

 ただ、もし太平洋戦争での日本が本土決戦をしていたとすれば、確かにそんなことは頻発したかもしれないとは思う。


 しかし、あらぬ曲解をしてほしくはないが……

 皆さんは、こういう事件が「なぜこんなに少ししか発生しないのか」と疑問には思わないだろうか。

 軍隊の訓練が、俗世間では非道と見なされるくらい過酷なものであること――むしろ、それで当然じゃないかと思われていること――は、世の中の常識と言っていいのではないかと思う。

 この平和ボケと言われて久しい日本の自衛隊でさえ、ある程度はそうなのだろうとみんな思っているはずである。

 そうすれば必然的に、「恨まれる教官」というのが発生しないはずがない。

 いや、日本中どこの自衛隊部隊でも、恨まれる教官・上官・先輩などはゴロゴロ存在するはずなのだ。

 そして恨んでいる方は、本物の銃を持つ機会がある。

 それなのに1984年以来「2回しか」銃乱射事件が起こっていないというのは、ある意味驚異的ではあるまいか。

 むしろそっちの方が気になるのは、私だけだろうか。

 
 それにしても、今回のような事件を防止するにはどうすればいいのだろう。

 根本的なことを言えば、「厳しくない、追い詰めない、優しい」訓練や自衛隊生活を心がけることだろう。

 しかしもちろん、そんな訓練が何になるのか、軟弱集団になるだけではないか、とたちまち脳内で反論が湧いてくる。

 これは、いま俗世間で流行りの「ホワイト過ぎてダメな企業(若手が逆に辞めていく企業)」みたいなものだろうか。


 最も現実的な対策があるとすれば、それは隊員の「精神診断・メンタル診断」をこまめに行うことだろう。

 それでアブナいと診断されれば、辞めさせはしないにしても武器に触れない部署に配置換えするのである。

 だが、おそらく、それが逆上を生むというタイプの人は必ずいる。
 
 そしてまた誰もが思うとおり、「武器に触れない部署」に行った人は蔑視されるようにもなるだろう。

 さらにまた、そういう部署に回すこと(回すと言うこと)が嫌がらせに使われることだって、誰でも考えつくというものだ。

 そう、自衛隊に限らず社員の(色んな意味での)メンタル問題というのは、いまや日本のあらゆる企業・団体の最大の課題と言っても過言ではない。

 そして、不吉なことを言うようだが――

 次に自衛隊での銃乱射事件が起こるのは、39年などという間隔では済まないと思うのである。

 それこそ3.9年周期になってもおかしくないと危惧するのである。

 そしてまた、自衛隊の中でも「教官・上官になりたがらない人」というのは、俗世間で「管理職になりたくない人」以上に激増するのではないだろうか……