10月17日、シリア民主軍(SDF。米軍の支援を受ける)報道官は「ラッカでの戦闘は終結し、同市は解放された」とAP通信に伝えた。
ラッカはイスラム国(IS、ISIS)が「首都」としていた街である。首都が陥落したからってその勢力が崩壊したというのは早計だとも思うのだが、やっぱり世間一般では「首都陥落」は国の滅亡と見なされる。
ところでISの最高指導者のバグダーディは、今年5月28日にロシアの空爆で死亡したとのニュースがあった。
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しかしどうも、今でも生きているようである。ただし、それが大問題だとか言われる気配はほとんどない。
比べるのも可哀想だが、故オサマ・ビン・ラディンに比べればはるかに影の薄かった彼である。
「カリフ」を名乗ってもその程度なのだから、もうその生死なんて世間的にはどうでもいいのかもしれない。
そして「イスラム国崩壊」というのは世界的大ニュースのはずなのだが――
ここ日本ではどうも、「世界のこぼれ話」みたいなベタニュースとして人々は“流す”気配が濃厚だ。
そんなのよりは「あおり運転」の方が、はるかにホットな注目(流行)ニュースなのである。
よくアメリカ人のことを「自国のことしか知らず、興味がなく、国際情勢には無関心」として批判・見下しする言説があるが、別に日本人だってそうなのだし、たぶんどこの国だってそうなのだろう。
さて、イスラム国が崩壊したのはもちろん軍事攻撃によるものではあるが、しかし「印象」の下落という点もそれこそ印象的である。
その末期(今年10月2日)には、10月1日にアメリカ・ラスベガスで発生し58人が殺害された銃乱射事件についてさえ――
その犯人スティーブン・パドックはISの戦士であり、これは自分たちがやったことだと声明するまで“落ちぶれて”いた。
(もちろんFBIはこれを否定している。)
イスラム国は史上例を見ないほど(本当は自分たちが関与していないのに)、他の犯罪・テロ事件について「自分らがやった」と便乗し尻馬に乗ることを続けてきた。
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その結末がラスベガス銃乱射である。
もう、落ちる所まで落ちたというか、哀れな凋落ぶりというか……
みなさんもラスベガス銃乱射事件のことを聞いたとき、「またイスラム国が自分らがやったと言うんだろう」と思ったはずで、実際そのとおりになった。
イスラム国というのは、そういう道化みたいな存在になり果てていたのである。
あの猛威を振るった一大勢力がこんな冷笑の対象になってしまうなど、なんと虚しいことではないか。
さてイスラム国滅亡後は、今度は本番の内戦である。
シリアはアサド政権(ロシアの支援がある)と反アサド派(主としてアメリカの支援がある)が争うだろうし……
早くもイラクでは、イラク政府軍と(民族独立を目指す)クルド自治政府軍がキルクークで戦闘している。
戦闘経験を積んだ反政府軍がアサド政権を倒すのかどうなのか、クルド勢力は独立できるのか、それが今後の焦点になるのはずいぶん前から言われてきたところである。
そしてイスラム国は過去の話となり、あれだけ重ねてきた暴虐もあっという間に忘れられていく……
本当に、何もかも虚しい話である。