アメリカのトランプ大統領が、飛ばしに飛ばしまくっている。
就任1ヶ月も経たないのに、派手な大統領令やツイッターなどを次々出しているのは周知のとおり――
その数々はみなさんご存じに違いないので、いちいち書くまい。
ここで書くのは端的に、「トランプはバカなのか? 狂っているのか?」ということである。
まず、もともと反トランプの人が「トランプはやっぱりバカである、狂ってさえいる」と言ったり思ったりするのは当然である。
自分と反対の意見・政策を持つ人に対しては、そういう反応をするのが(いわばまっとうな、ごく普通の)人間というものだ。
しかし冷静に考えて、トランプが本物のバカで狂人であるというのはほぼ信じられない。
バカな狂人が世界的「不動産王」になれる、というのは、非常に説得力のない話である。
ドナルド・トランプとは、「世界人口の半分に等しい富を持つ8人衆」とまではいかないが、大成功したビジネスマンであり事業家である。
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そんな人間がモノホンのバカであるなんて、信じる方がバカなのではあるまいか。
しかしそういうバカなことに、普通の人間は簡単に陥ってしまうものなのもよく知られている。
「敵を甘く見る」というのは、戦いにおいて最もやってはいけないこと――そんなことをする将軍は負けて当然と思われている。
そんな話を本で読んだりドキュメンタリーで見たりすれば、百人中百人が「全くだ、そもそも何で敵を甘く見るなんてことができるのか」と感じるものだ。
しかしいざ、自分自身のこととなると――
自分と反対の意見を持つ人間に対しては、簡単に「こいつらはバカ」「わかってない」と感じないではいられないのだ。
おそらくこれは人間の本性であって、ただ超人的な精神力を持つ人だけが、この誘惑を(何とか)免れるのだろう。
だからこそ「敵を舐めて敗北する将軍」は歴史上腐るほどいたのだろうし、これからも何度でも同じことが繰り返されるに違いない。
それはともかく思うのは――
トランプとは、現代という「ニュース化社会」に(意図的かどうかはわからないが)極めてよく適応した大統領だということである。
ニュース化社会においては、常に最新ニュースだけが重要性を持つ。
いくら大事な事象だろうと、何日か何週間か経てばもう時代遅れの代物と化す。
もちろんそれは、マスコミにとってだけではない。我々民衆自身がそう感じるのである。
(だからこそマスコミは、生き残るために最新ニュースを伝えるのに鎬を削るのだ。)
ここ3週間のトランプは、まさに世界の耳目を集めまくっている。世界中にニュースのネタを提供している。
このニュース攻勢の前には、イスラム国などどこへ行ってしまったのかと感じるほどだ。
さすが世界的スーパービジネスマンのやり方だ、と感心すべきだろうか?
少なくともトランプは、「やることが遅い」とか「有言不実行」とか、「ブレている」などという非難だけは受けなくて済みそうである。
そしてまた――
最初に超スピードでガツンとやっておく、というのは、ビジネスマン時代からの彼の流儀なのかもしれない。
確かに、「こいつはマジでやると言ったらやる男だ」と強烈に印象づけておくのは、(ビジネスに限らず)世の中で舐められないための有効な手段ではある。(この点トランプは、意識的にやっていると思う。)
さらに言えば、これはトランプの年齢にも関係するのかもしれない。
(私は、その人物の行動について、その人物の年齢はかなり大きなファクターだと思っている。)
トランプは今、70歳。もし大統領を2期やるつもりなら78歳で退任となる。
その間に自然死するのは、おおいにあり得ることである。
しかも“暗殺されるかも”という恐れを、結構現実的に感じていることもまたおおいにあり得る。
自分が死ぬ前に、自分が思っていることを少しでも実行してやろう――
トランプがそういう焦りに駆られていても、まったく不自然なことではない。