プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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アメリカのシリア攻撃と「ロシア・プーチンへの過大評価」

 4月6日(日本時間では4月7日)、アメリカは地中海の艦船から巡航ミサイル59発を発射し、シリアの軍事施設を攻撃した。

 シリアのアサド政権が、同国北西部での反政府勢力への攻撃に化学兵器を使用したことへの報復だとされる。

 これにより、アサド政権を支持してきたロシアとの関係悪化は避けられなくなったとも報道されている。

 さてロシアと言えば、昨年のアメリカ大統領選挙において、サイバー攻撃による選挙干渉を行なったと言われている。

 しかもそれは何と、トランプを大統領にしようとの意図からだという。


 これは常々感じていることなのだが、どうも日本人はロシアという国――そしてそのトップであるプーチン大統領という人物を、相当過大評価しているのではないかと思う。

 ロシアについてはしばしば「おそロシア」などと言われるものの、中国・韓国・北朝鮮への態度とは違い、そこに「嫌いだ」とか「劣ってる」という感情は非常に希薄なようである。 

 またプーチン大統領と言えば「怜悧で恐ろしい男」というイメージであり、これもまた北朝鮮のトップ金正恩キム・ジョンウン)への態度とははっきり異なる。

 多分日本のネットユーザーに「世界主要国のトップで最も頭が切れて恐ろしいのは?」というアンケートを採れば、ダントツでプーチンが一位だろう。

 だが果たしてプーチン大統領とは、そんなにもずば抜けて頭のいい男なのか?

 
 ロシアがトランプを大統領にしようとした意図は、もちろん私などにわかるわけがない。(もし選挙干渉の話が本当だとしたら、の話である。)

 しかしヒラリー・クリントンドナルド・トランプのどちらが御しにくいかと言えば、それはもちろんトランプの方ではないだろうか?

 トランプは「自分はロシアのプーチン大統領を尊敬している」と言ったらしいが、そりゃ「軽蔑している」なんて言うわけがない。

 自分のファンがアメリカ大統領になればそりゃ都合がいいに決まっているが、トランプが個人としてプーチンのことを好きだとしても、アメリカ大統領としては必ずしもそういう行動を取るわけにいかないというのも、わかりきったことである。

 そしてもちろん、「可愛さ余って憎さ百倍」という現象が多くの人間に生じ得ることも、簡単に予測できるものだ。

 もしプーチンが本当にトランプにアメリカ大統領になってほしいと考えていたのだとしたら、今回のシリア攻撃は何なのだろう。

 それは非常にトンチンカンなことをしていた、ということにならないか?

 なおロシアは、トランプの弱みを握っているからこそトランプの大統領就任を望んだ、という説もある。

(かつてトランプがロシアを訪問した際に売春婦と寝た、などという弱みである。)

 しかし、そんな話が広く語られているのであれば、これからトランプにどんなスキャンダルが起こっても「それはロシアの陰謀だ」と言い抜けられる道を作ることになる。

 またロシアがいよいよトランプの醜聞を暴露したとなれば、それは結局「ロシア=恐喝者」のイメージを世界中の人に植え付けることにもなろう。

 そして根本的なことなのだが――

 ロシアがアサド政権のような政権(もちろん北朝鮮と同様、世襲独裁政権)を支持せざるを得ない立場にある、ということ自体、その外交戦略(少なくとも中東戦略)がそんなにうまくは行ってない証拠のように見えてしまうのだ。

 プーチンが頭がいい、というのは事実だろう。

 政治家に必要とされる冷酷さを持ち合わせているのも事実だろう。

 しかし彼の出身であるKGBソ連秘密警察)だが――

 我々はアメリカのCIAやFBIが欠陥だらけで無能でさえあるという話をよく聞かされるが、それが本当ならKGBについてもそれがまた真であった、と考えるのが普通ではないか?

 何かこう我々は、ロシアの情報機関やプーチン大統領というものについて、非常に大きな買いかぶりや神秘性付与を行なっているように思えてならない。

 今回のトランプのシリア攻撃までも「プーチンの読みのうち・掌の上」と解するのは、ほとんど贔屓の引き倒しではないかと思うのだが、どんなものだろう?