4月18日付けの朝日新聞によると――
法事などへの僧侶派遣サービス「お坊さん便」の販売中止を求めていた全日本仏教会に対し、ネット通販大手amazon(アマゾン)が文書で回答したらしい。
「全日本仏教会の意見をサイト上に載せる意向を示したが、中止要請への言及はなく、事実上、販売中止に応じない考えを伝えたとみられる」とのこと。
私は今日初めて、amazonで「お坊さん便」のページを開いてみた。
むろんみなさんも簡単に見れるので見てみればいいのだが、一応テキストのみをコピペしておく。
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[お坊さん便] 法事法要手配チケット (移動なし)
¥ 35,000 + 関東への配送料無料
通常3~5週間以内に発送します。 販売元: 株式会社みんれび
5つ星のうち 3.6
139件のカスタマーレビュー
ベストセラー1位- カテゴリ 位牌
価格:¥35,000 & 関東への配送料無料
注: Amazon プライムの対象外です。
通常3~5週間以内に発送します。 在庫状況について
お届け予定日:5/24~6/7 通常配送を利用した場合のお届け予定日です。
この商品は、株式会社みんれび が販売、発送します。
返品については出品者のリンクからご確認ください。
この出品商品にはコンビニ・ATM・ネットバンキング・電子マネー払いが利用できます。
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amazonの商品ページにはもちろん決まった書式があって、これだけを特に例外として文言を変えるわけにはいかないのだろうが、まさに「商品」の扱いである。
(「関東への配送料無料」というのが特にツボだ。)
私はこの「配送サービス」、便利だしいいことだと思う。
確かに最低価格が35,000円というのはそこまで安いわけではないし、「戒名オプション」20,000円というのも際立ってリーズナブルな価格とは言えない。
しかし大勢の人が言うように、「定額の明朗会計」であるだけ、普通に近くの寺に頼むよりずっと納得して支払える気持ちにはなるだろう。
だいたい多くの人は、近所に限らず寺というものとそんなに親密ではないはずだ。
付き合いのある人(の親など)が死ねば通夜には行くが葬式には行かないことの方が多く、その通夜はたいてい寺でなく葬祭会館みたいなところで行なわれる。
観光で有名な寺院に行くことはよくあっても、近所の寺には一年に一度も行かない人はたくさんいる。
そんな状況であるのだから、ネットでお坊さんを注文できるというのは実に時代に適合的である。
もっとも、それでもやっぱり「親が付き合いのあった寺」「(普段は全然意識していないが)自分が檀家である寺」の坊さんに頼むのを止め、amazonで注文するのはなかなか心理的にやりづらい面があるだろう。
しかも「お坊さん便」は、最も僧侶を必要とする通夜や葬式には利用できない。
「通常3~5週間以内に発送します」なのであり、やはりいつやるか日程が決まっている(時間に余裕のある)法事の際に注文するのが主なのである。
よって、「お坊さん便」の利用が増えるのは間違いないが、かといって既存の寺の収入を大きく圧迫するとまでは思えない。
(しかし、大都会ではどうなのかわからないが……)
ところで、今の日本人のほとんどは「あの世」が実在するなど心底から信じてはいないはずである。
それなら「葬式」も「法事」もやらなくていいようなものだが、やはりそれは(なぜか)気が引ける。
親が死んだら車の後部座席に乗せ、火葬場に乗り付けて「ヘイ、焼いてくれ!」というわけにはいかないのは誰にだってわかる。
「戒名」なんて誰でも自由に簡単に作れると重々わかっていようとも、それでも(なぜか)僧侶に付けてもらっている。
(そして、そんなことに何万円も払っている。戒名を付けるとは、この世で最高度に割のいい「仕事」だろう。)
私は思うのだが、法事に僧侶を派遣するサービスが実現したのなら――
次は「家族が死んだまさにその時、僧侶や葬儀業者を派遣してくれるサービス」を実現させるべきだろう。
もちろんそれは低価格で、葬式も通夜も簡素極まるものでよい。
(遺体を棺に入れるのに、注文者本人が手伝ってもいいだろう。)
ただまっとうに・無事に、自分と遺体を火葬場まで送り届けてくれ、遺骨を拾って葬儀が完了するまで段取り・エスコートしてくれればよい。
私がこういうことを言うのも、近年は「親の遺体を家に放置したまま同居を続け、死体遺棄容疑で逮捕される」子のニュースがちょくちょく流れるからである。
ああいうのには、「親の年金が止まったら自分の生活に困るからそのままにしておいた」という面もあるのだろう。
しかしもう一面、「純粋に親が死んだらどうしたらいいか分からないからほっといた」ことも大きな理由としてあるのではないかと思う。
彼ら・彼女らは近所づきあいも友だちづきあいもなく、もちろん寺との付き合いもあるわけがない。
親戚がいるにはいるが、疎遠であって連絡先すら知らないことはむしろありふれたケースだろう。
当然、葬儀会社に電話をかけることすらハードルが高いことが予想される。
そんな彼ら・彼女らにしても、家(やスマホ・ケータイ)がネットに繋がっていることは多いのではないだろうか?
もしネットで葬儀一式を頼め、たとえば10万円未満でそれができるなら、これはそういう人たちにとって福音になるのではないかと思う。
韓国旅行に5万円未満で行ける時代、こういうことはやってできないことはないと思うのだが……
(戒名を付けることなど、どこまでも低価格化できそうでもある。)
いや、そこまで孤立化・窮乏化した人でなくとも、葬儀に何十万円・何百万円もかけたくない/かけられない人は大勢いるはずである。
そういう人の数は、つまりそういうサービスへの需要は、これからますます増えていくに違いない。
全くの素人考えではあるのだが、ここには大きな「ビジネスチャンス」があるように思う。
そもそも「普通の」葬儀に数十万円かかるのが普通だ、という時代であることの方がおかしい――
そんな見方もあると思うのだが、どうだろうか?