プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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「経団連会長室に初めてパソコン設置」は日本の希望-こんなんでもまだ経済大国なのだから

 経団連といえば、日本を代表する企業などが集まった団体である。

 いくら経済音痴の人でも、聞いたことがない人はまずいない団体である。

 その経団連の会長に、日立製作所の中西宏明(72歳)氏が就任したのは今年2018年の5月。

 その人が「常識にとらわれない改革」をしている、というのが、10月24日の読売新聞朝刊の連載「解剖財界」第1回目の記事となった。

 なんでも中西氏は、会長として初めて会長室へパソコンを持ち込み――

 事務局の役員・職員らとメールで事案の進捗状況を聞く、などということを始めたらしい。

 メールを受け取った職員らは、

「最初は本当に驚いた。これが中西さん流だ。主に紙でやり取りしてきた職員の働き方を変えようとしている」

 と、その革新ぶりに驚いているとのこと。

nlab.itmedia.co.jp


 この記事がネットで反響を呼んでいるのは当然である。

 いったいこれはどこの国の話なのか、土人の国なのか、

 とは、誰でも感じるところだろう。


 先日私はこのブログで、日本企業には――


●「目上」の方には、断じてメールで報告するなどという失礼があってはならない。

●だから、何が何でも紙によって「直接、御前にお伺い申し上げて」説明申し上げるのが人の道、

●そういうことだから、ヒドい場合にはトップの部屋にはプリンタすら置かれていないのが珍しくない


 という土人的(つまり非効率で競争性がない)風俗が蔓延しているのではないか、

 と書いたものだが――

tairanaritoshi-2.hatenablog.com


 こともあろうに、なんと経団連会長という経済界のトップ中のトップ(なのだろう、たぶん)でさえも、本当にパソコンを置いていなかったことが明らかになったわけだ。

 そしてこんなことが、2018年の今になって「常識にとらわれない改革」として新聞記事に書かれている……

 つくづく、日本の土人性もここに極まったものだ。


 もっとも、経団連会長というのはいわば本業の社長業に対する副業なので、そんなに会長席にいることはないのかもしれない。

 だから、パソコンを置く必要はそんなになかったのかもしれない。

(と、いちおう弁護しておく。弁護する義理はないのだが。)


 しかし今回の「改革記事」というのにも、中西会長が「メールで施策の進展などを問う」とは書いてあるが、「会長とその他がメールでやりとりする」とは書いていない。

 よっておそらくは、メールで用件を伝えるのは会長からの一方通行であって――

 会長にご説明申し上げるのは、いまだ紙にプリントアウトして御前に伺っているように思う。

 そうでなければ失礼で非人道的だ、という日本人の通念が、そんな簡単に覆ることはないだろう。

(たぶん中西会長ご自身も、自分が「目下」にメールは送っても、目下がメールをよこしてきたら「怒る」のではないだろうか。)


 だが、とはいえこのニュース、日本の前途に大いに希望を抱かせるものでもある。

 なにしろ天下の経団連会長がパソコンを持っていなかった、

 このたび部下にメールを送り始めたら、それが「常識にとらわれない改革」だと言われる……

 こんな土人状態でも、まだ日本は世界の経済大国の一角にあるのだから。

 
 このまま何もせず放っておいたとしても、経済界の上層部にいる老人層はこの世から退場していく。
 
(人間が死ぬというのは、なんと素晴らしいことだろう……)

 さすがに新しい上層部の世代は、メールを送って改革になるなど思いも寄らない人たちになるに違いない。

 そうすれば日本は、まだまだ世界と張り合っていけそうである。

 この落日の国にとって、これは一筋の光明ではあるまいか。


 それにしても、日本は世界規模の「メガ・コンペティション(巨大競争)」の中に巻き込まれている、と言われて何十年が経つだろう。

 それでいてパソコン設置とメール送付が2018年の「改革」だとなるのだから、ビジネス界の最前線でまともに働いている人たちは、泣くに泣けない気分だろう。

 日本の夜明けはいまだ遠い、しかしいずれは夜が明ける、と思うべきなのか……