「カネ(費用)をかけずに成果を出す方法(アイデア)を考えよ」。
この言葉は日本(世界?)のあらゆる組織でよく聞かれる。あなたも上から常々言われているかもしれない。
しかしこれ、初めて聞いたときから感じていたことなのだが、まるきり詐欺師の言う言葉ではないだろうか?
「カネをかけずに成果を出す方法がある」とは、「金をかけずに儲かる方法がありますよ」というのと全く同じである。
後者のセリフを詐欺師の言と見なさない人は一人もいまい。
そんな虫のいい話があるわけないだろと誰もが思い、こんなのを信じる人間はバカだと誰もが笑いものにする。
しかしそれなのに、前者の言には誰もが「納得」するのである。
正しいこと・もっともなことだと思い、人にも何のためらいもなく言うのである。
投資なしで(あるいは微々たる投資で)、大なる効果・収益を上げる――
思えば、これほど世の中を舐めきった話があるだろうか。
世界の名だたる巨大企業が、考えに考え抜いて投資してもなお、全てが成功するわけではない。
いや実際は、ほとんどが「失敗」「トントン」「許容できる範囲」のどれかに留まっている可能性は大いにある。
(そもそも成果を計測できていない/してもいない、ということも多そうだ。)
それなのに、あなたやあなたの属する組織にはそれができるはずだと言う。
これは良く言って、「宝くじを買い続ければ必ず当たるはずだ。だから宝くじを買え」とハッパをかけるのと同程度の話ではないだろうか?
「成果を出すアイデアを出してくれ。予算は100万円用意する。アイデアが採用されたらその100万円を使ってもらう」
と言うなら、まだわかる。
しかし、そういう用意がされることがほとんどないのはあなたもご存じのとおり――
今日も日本のあちこちで、(たぶん絶え間なく)「コストをかけずに成果を上げるアイデアを出そう」という詐欺師の言葉が飛び交っている。
しかし、そんなウマい話があるわけないのである。
成果を上げるには、相応の投資・費用が必要に決まっているのである。
投資をせずに成果を上げる方法がある、自分の組織内にそれを考えつく人がいる、と信じるのは、基本的には現実を離れ空想の世界を生きることと断じてよい。