長崎市内の某郵便局長――特定郵便局長の世襲3代目――が16億円もの詐欺を働き、しかも15万円しか弁償してない(らしい)事件の記事が、デイリー新潮に掲載された。
正確には書籍『ブラック郵便局』の抜粋である。
(⇒ デイリー新潮 2025年4月15日記事:被害総額16億円、私腹を肥やした郵便局長の「だましの手口」 顧客の金で戸建て4軒、車21台を購入)
この郵便局における「特定郵便局長」というのは世間でもかなり有名で、それが(たいがい)世襲だというのもセットで知られている。
もちろん全国津々浦々にある郵便局は、日本郵便株式会社という日本有数の巨大民間企業の支店である。
その店舗数はコンビニ全社で5万なのに比べ、日本郵便たった1社で2万3500ほど。
そんな巨大民間企業で「世襲」というものが普通に行われていることも驚くべきだが――
しかしもっと驚くべきは、これは民営化前の郵政省すなわち郵便局員が国家公務員だった時代から継続されてきたものだ、ということだろう。
公務員なのにこれほどあからさまに大規模で公然たる世襲が行われてきたというのは、世界的にもなかなか例が見つからないことではなかろうか。
そしてこれは、特定郵便局長の存在そのものほど知られているとは言えないだろうが……
郵便局の局舎や敷地をその特定郵便局長自身が所有し、それを日本郵便株式会社へ賃貸している場合が多いというのもまた、昔からずっとそうらしい。
そうであるどころか、局長会というのがそういうスキームを推進しているということが、上記引用記事にも書かれている。
いやはや何というか、国家機関や知らぬ者なき巨大民間企業とも思えぬようなスキームだが――
これはどことなく、江戸時代の庄屋などといった「土着職業世襲」の最大最後の生き残り、といった感想を人に抱かせるものがある。
そしてむろん、そんな存在を「既得権益」という言葉と結びつけて考えない人はこの世にいないのである。
上記引用記事の3代目世襲局長は、息子にその地位を譲ってからもその局舎に「監査役」を非公式に名乗って詐欺活動を続けていたとのこと。
これは凄まじいまでのコンプライアンス逸脱だと思うのだが、それが可能なのも土着職業世襲の郵便局ならでは……
そして、そんなことを許す(たぶん見て見ぬふりしていた)巨大民間企業の内幕が窺える、というものだ。
まあ、そうは言っても、全国の大半の特定郵便局長は真面目に仕事をしているのだろう。
しかし同時に日本郵便株式会社の内部の人の大半も、この特定郵便局長制度やその局長会というものに、心底苦々しい思いを抱いているのが本当ではないか。
おそらく特定郵便局長の関係者以外の社員は、こんな制度は我が社のガンだ悪習だ恥だと、ずっと思っているはずである。
言うまでもなく郵便制度は明治前期に始まったが、まるでここだけ江戸時代のまま令和まで来てしまった有様だからだ。
その意味でいまだ郵便局や日本郵便株式会社には、維新の時が来ていないようでもある。
また、その意味で特定郵便局長の世襲制廃止・禁止は、日本郵便株式会社という巨大企業が本当に近代化・現代化したかどうかを他人が判断するメルクマールともなるのだろう。
要するに、こんな世襲制を抱える企業は、コンプラ的にというよりイメージ的に「見てくれが悪い」のである。
そして、そう思っている人は日本郵便株式会社の中にも――上層部にも――大勢いることだろう。
はたして同社はいつこの民間企業世襲制を廃絶できるのか、注目している人もいないわけではないだろう……