現今の半導体不足について日本企業が世界に“買い負け”している原因を探った記事が、ダイヤモンドオンラインに出ている。
(⇒ ダイヤモンドオンライン 2023年1月26日記事:「日本企業に半導体を売りたいか」“買い負け”真の敗因を関係者がこっそり吐露)
要約すると、買い負けの原因は世界情勢と言うよりも、むしろ日本企業自身の中にある。
その原因3つは、次のとおり。
(1) とにかく決断が遅い。
責任を取らないでいいように何人もの稟議を経て初めて物事が決まる。
(2) 日本は顧客としての魅力が低下していることを理解していない。
その表れが「相見積もり」で、単に金額だけ見て一番安いところへ発注する。
(3) とにかく過剰なサービスを求める。
聞かなくてもわかること(公式サイトに書いてあること)をしきりに聞いてくる「聞く聞く病」である。
……いやあ、これは分析とは言わないかもしれないが、見事な分析だと思う。
とはいえこれらは近年、日本企業の悪癖として耳タコと言っていいほどよく聞く話でもある。
たとえば、海外企業は日本企業の“視察”を嫌がる。
なぜならそれで新たな商売が始まるわけでもないし、始まってもそれがあまりにも遅すぎるからだ、というように。
また、相見積もりと言えば、こういう話を知っている(現に体験している)人も多いはずである。
ある購入についてA社・B社・C社から相見積もりを取らなくてはならないが、それはA社に頼んでB社とC社の見積もりを取ってきてもらうことで実施される……
という、「バカですか」と思わずにいられない話を。
そして「聞く聞く病」について言えば、日本企業というより日本人・日本人労働者自体がこの病気にかかっているのではないか。
老若男女問わず、呆れるほど多いのである――
書いてあるのに、ネットでチョチョッと調べればすぐわかるのに、あえてそんなことを電話をかけて聞いてくる人は。
貴男も日々働いていて、思わないだろうか。
いったいどうしてこんな国が世界第二の経済大国になったことがあったのだろう、と。
あれはやはり、おかしかったのではないか。
日本は没落すると言うが、それは「正常化」というものではないか。
また、総じて思うのが、日本人はもはやこんな「悪癖」とされるやり方しかできなくなったのではないか、ということである。
多重稟議にせよ相見積もりにせよ「何でも聞く」習性にせよ、
顧客の方がとにかく優位でエラいんだという意識(これはもう「道徳」である)にせよ、
過剰サービスが当然の「人の道」という意識にせよ……
日本人はもう、こういう日本式のやり方・考え方しか、まっとうなことと思えなくなっているのではなかろうか。
他のやり方があろうとは思えなくなっており、それどころか他のやり方というのは「あるべき道」から外れた不道徳、とさえ感じる体質になっているのではないか。
これは例えて言えば、「昔の中国人」みたいなものかもしれない。
地大物博、中華と夷蛮。
自国に足らないものはなく、他国から学ぶものは何もない――
それが昔の中国人の意識であり、まさにまっとうな道徳観でもあったと言われる。
現代日本人は、なまじ経済大国になった近過去があるばっかりに、こういう小中華とも言うべき意識を持ってしまったのかもしれない。
いや、昔の中国人は「あえて」外国から学ばなかったとも言えるが、
今の日本人は「日本式のやり方しか考えられなくなった」から「学びもできない」状態になっているとも言えるだろうか。
とはいえ救いは、まるで現代が江戸幕府の末期症状時代だとすれば……
もうすぐ黒船のような「外部からの衝撃」が来て、急激な変革が訪れるだろう、ということである。
よく言われるように、日本はそういう外部衝撃・巨大外圧によってしか大変革は起こらない、という伝統がある。
その衝撃や外圧というのが、外国からの侵略か、南海トラフ巨大地震か――
どれになるかはわからないが、そういうことはいつか必ず訪れると見ていいだろう。