ついにその日が来た。
あの学生時代に誰もがやってきた「体育座り」が、槍玉に上がる日がである。
(⇒山陰中央新報ニュース 2022年5月6日記事:体育座り「つらい」腰痛原因 見直す学校も)
私は上記引用記事で初めて知ったのだが、あの体育座りというのは「世界で日本でしか見られない珍しい座り方」らしい。
人間の座り方の種類なんて極めて限られていて、世界には何千もの民族・種族があったのだから、そのうち一つくらいはこういう座り方を常としていた集団がありそうなものだ。
しかしそれでも、これは日本独自の(しかも1965年という近過去から広まった)座り方だという。
もちろん日本独自の座り方には、長い伝統を持つ「正座」というのがあるのだが……
座り方などというたいしたバリエーションもなさそうな分野において、2つも独自の座り方を開発・定着させてしまう日本人というのは、確かに世界に類を見ない独特・特異の民族であり、文化圏なのかもしれない(笑)
さて、この記事がきっかけで、日本の学校での体育座りは急速に姿を消していくだろう。
そもそも体への悪影響は度外視するとして、汚い地面に尻を付けるというのがもう、洗濯上かなり家庭での問題だったはずである。
(潔癖症の子どもやその親は、今までどう思って体育座りに文句を付けなかったのだろうか……)
だが、しかし……
体育座りに限らず、とにかく「座る」――
正確には「長時間座る」という行為自体が体に極めて悪影響を及ぼしている、
というのは結構有名な話だと思うのだが、こっちの方は日本から急速に姿を消すということは非常に考えにくい。
(⇒ ビジネスインサイダー 2017年10月20日記事:座りすぎの死亡リスクは最大40%増??日本人は世界一座りすぎている)
「座りすぎ」を解決するには、「立つ」か「寝る(寝転がる)」のどちらかである。
このうち「立つ」の方は、椅子を設けず立ったまま会議をするとかいう形式でぼちぼち広まっているとは言える。
しかし「寝転がって仕事する」というのは、とてもじゃないが職場で容認されるとは思われない。
(そもそも「座る」より体を動かさなくなる。)
少なくとも日本人は、いまだ「椅子に座って仕事する」以外の仕事方法を編み出していないし、真面目に想像することもできていない。
そうなると、どうも椅子に座って仕事するのが体に悪いのは「足の筋肉を使わず血行が悪くなる」ことが原因のようなので、
対策としては「貧乏ゆすり」の奨励、ということになりそうである。
もちろん、椅子から立ってその脇でちょこちょこスクワットでもしていればいいのだが――
そんなことすら普通の日本人は(日本人以外でも)実行に移そうとはしないのは、明々白々なことだろう。
運動すれば体にいいのはわかりきったことなのに、それでも大多数の人は運動しようとしないものだ。
しかしやはり、仕事している人間がみんな貧乏ゆすりをやっている、などという光景は、日本人にとって「道徳的に許せない」ことなのに違いない。
はたして日本人は、座り方に関する働き方改革ができるか。
体育座りは廃止できても、「長時間座り労働」を改革できるか。
断言はできないものの、それは当面無理ではないかと思わざるを得ない。