新型コロナに対するワクチン開発が進んでいるが……
スイスの民間機関である世界経済フォーラム(WEF)の調査によると、調査対象国の人たちの4分の1は、接種を望んでいないそうである。
大雑把に、接種への同意率を見てみると……
インド・中国・韓国・ブラジルは80%超、
オーストラリア・イギリス・メキシコ・カナダは70%超、
そして日本とドイツは同率69%、
最下位のフランスは54%。
なんだか、お国柄が出ているのか出ていないのかわからないようなカテゴライズではある。
しかし少なくとも、日本はアジア諸国の中で最も同意率が低い、と言えそうだ。
ところであなたは、思わなかっただろうか。
日本人の69%すなわち10人に7人がワクチン接種に同意するというのは、あまりにも高すぎるのではないか、と。
あなたを含めた周りの人にアンケートすれば、とてもそんな数字にならないはず……
いや逆に、「接種しない」が7割の間違いじゃないか、と。
それはもちろん、「副作用が怖い」からである。
打ったが最後、たとえば何十年後かに予期せぬ副作用が出るとか、別の病気に罹りやすくなるとか、あるいは今までは軽傷で済んでた病気が重篤化してしまうとか……
この2020年の現代でさえ、人はこう思うのが普通なのだから――
「種痘」「牛痘」を初めてやった時代には、どれほどそれがおぞましいものと受け取られていたか、往時を偲ぶことができるではないか。
さて、人が新しいワクチンに対し副作用を恐れるのは、当然のことである。
それは過去に何度も起こり、何度も報道されてきた、薬害事件の数々が影響しているだろう。
しかしもう一つ、さらに大きい影響を与えているものがあると思われる。
それは、テレビ・映画・漫画・ゲームと言った、創作物の数々である。
我々は、
●ワクチンと称して打つものが、実は毒だった。
それは悪の組織や非道な科学者、あるいは政府の陰謀であった。
●夢の新薬や新ワクチンが、思わぬ副作用で世界を破滅させそうになる。
とかいった創作物を、今までどれだけ見てきたかわからない。
よほどの高齢者でなければ、普通の人は今まで一度はそういう設定のストーリーを読んだり見たりしたことがあるはずだ。
もはやそういう設定は、一般人の基礎教養だと言っても過言ではない。
それは薬害事件の記憶などより、ずっと深く広範に世の中へ浸透している。
だからワクチン接種と聞けば、そんなことしたくないと反射的に思うのが、少なくとも日本では普通の反応に違いない。
だから日本でワクチン接種が開始されても、その接種率が――
今回アンケートのように7割行くことは、非常に厳しいと予想してよいのではないか。
俗に、「現実は芸術を模倣する」と言う。
そのとおり、芸術というか創作物は、人間の考え方や感じ方に重大な影響をもたらすものだ。
もしかしたら今の日本人のワクチンへの拒否反応は、そういう創作物が溢れている分だけ、牛痘の時代よりはるかに強いものになっているのではあるまいか。