プロレスリング・ソーシャリティ【社会・ニュース・歴史編】

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「AI人事」の時代・適材適所の完成とネオ身分社会の到来 その1

 新年明けましておめでとうございます。

 今年1発目の記事は、いま進境著しい(と思われる)AI(人工知能)について――

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 AIの実用・活用は、社会に大きなインパクトを与えるに決まっている。

 我々に身近なところで言えば、企業のマーケティングや購買予測(そして購買誘導)に効果が大だと言われている。

 しかし、もっと身近ではるかに効果が大きいに違いないのは、AIの人事への活用である。

 それはマーケティングの分野でなどより、ずっとずっと、比べものにならないほどの影響と成果を上げるのは確実だ。

 なぜならAIの社員行動分析と判定により――

 我々はついにあらゆる組織運営者・会社経営者の夢であり、誰もがそれを実現すべしと口にしている、「適材適所」というものをほぼ完全に手に入れるだろうからである。 

 そしてまた、「情実人事」「印象人事」などと呼ばれる不公平な人事も、ついに跡を絶つだろうからである。


 これは特に日本において言えることだと思うが、組織人事の最大の問題は「配慮」と「年功序列主義」だろう。

 ここに、明らかにずば抜けて有能優秀で実際に(何らかの)成果を上げている若手社員がいるとする。

 しかし大部分の組織においては、彼・彼女は一足飛びに管理職・役員に昇進するのではない。

 どんなに優秀だろうと実績があろうと、その人は当分の間「下積み」をするのが通例である。その「当分」は、時に数十年に及ぶことも珍しくない。 

 なるほど、いくら下っ端として優秀だろうと、管理職として優秀かは未知数に違いない。

 しかしそれは、管理職にしてみなければいつまでもわからないことである。

 では、どうして多くの組織では二十五歳の優秀な若者を、たとえ試しにでも五十歳の社員の上に立たせないのか?

 むろん「配慮」があるからである。「年功序列イコール大事な社会道徳」「下積みイコール経験イコール一番大事なもの」という公式が、多くの人の心に確固としてあるからである。

 しかし私は思うのだが、そういう配慮や社会道徳によって、ほとんど全ての組織が巨大な損失を被っているのではなかろうか。

 その若者(たち)が会社を動かせば新機軸や利益を次々打ち出せるというのに、あたら才能を無駄に塩漬けしているのではないか。

 そしてこの損失の累計は、日本の国富を大幅に低減させているのではないか――


 さてここで、AIによる人事である。

 AIの判定は、人間の(上司たちの)それよりはるかに公正かつ情実抜きであることは、誰もが認めるはずである。

(もっとも、その公正さを完全に信じさせるには、今の信用ある会計監査会社に相当する“AI運用監査会社”がなければならないだろう――

 これは新職種・新業種として近々本当に現れそうだ。)

 AIが「管理職適性あり」「指導者適性あり」と判定した若手は、本当に管理職なり重役になる。

 営業の適性なしとされた者は営業に回らず、何もたいした適性がないと判断されれば解雇されるなり閑職・単純業務に回る。

 むろん管理職・マネジメント職の適性なしと判定されれば、定年までそういう地位になることはない。

 ここで再び私は思うのだが、そういうAI人事をする会社は、従来の非AI人事をする会社を、ほぼ確実に業績で圧倒するのではあるまいか。

 そうなれば(そうなることは決まっているはずだが)、株主も消費者も黙ってはいまい。

 AI人事が非人間的だとか配慮に欠けるからと言って従来型人事を続ける会社は、株主らから巨大な圧力を受けるはずである。

 また消費者も、「いまだにそんなこと言っている遅れた会社」として蔑視する雰囲気になるだろう。

 そういう会社は市場から淘汰され、AI人事をやっている会社しか生き残れなくなる……

 たぶんその生き残った会社連は、採用活動時点からAI判定により、「採用したいと望む職種に適合判定を受けた」人材を争奪することに血道を上げるようになる。  

 むろん各々の会社では、いわば人類の夢である「適材適所」が実現している。

 まさにユートピアの世界である。


 もっともAI人事導入の障害として、「いま管理職である人間はAI判定を受けたがらない」という点がある。

 せっかくいま管理職や重役なのに、「この人は管理職に向いてない」と判定されてはたまったものではないからである。

(このブログで何度も言及してきた、「自分だけは例外」原則がまたしても顔を出す。)

 だがしかし、やっぱりそれもさっき述べたばかりの理由によって――つまり「そんな会社はダメ会社」という雰囲気に包囲されることにより、結局は陥落するだろう。


 ああ――

 「自分は向いてない仕事をやらされている」と感じつつ仕事している人間が、日本には何百万人いるだろう?

 それがほとんど絶望的な領域にまで至っている人も、決して少なくはないだろう。

 そしてまた、「管理職になるべきでない人間が管理職になっている」――

 これは古今東西あらゆる下っ端の不満・憤懣のタネであったし、従来型人事を続ける限り、未来永劫あっちでもこっちでも無数に繰り返されるに違いない。

 しかし、AI人事はそれらを廃絶するのである。

 みんなが自分に向いた職を――客観的にこれ以上なく正しいはずの判定を経て――得る。

 管理職になるべきでない者が管理職になり、下っ端を困らせることはもうなくなる。

 これは本当にユートピアの世界であって、この世は最適解で満ちあふれることになる。

 いやぁ、めでたしめでたし――と、たぶん大多数の人は思わないはずだ。